
浦和学院は2013年春のセンバツで優勝。2年生左腕・小島が頂点へ導いたが、高校時代の思い出は別にあった
6月30日に発売した『第99回全国高校野球選手権埼玉大会展望号』では、全出場156チームの戦力分析、注目選手を掲載している。
巻頭カラーで特集したのが「あの夏のHERO」。埼玉高校野球ファンにインパクトを残した4人を掲載している。
そのうちの一人、早大3年の
小島和哉は、浦和学院2年春のセンバツで同校を初優勝へと導いている。
4月6日、東京都内で行われた東京六大学の開幕前の懇親会。小島は各6校からの指名選手(計12人)の一人として出席していた。すでに、名門ワセダが誇る左腕エースである。
歓談の合間、12人は壇上に上がり、報道陣からの質問コーナーに対応。
「これまでの野球人生で一番、印象に残っていることは?」
小島はこう答えた。
「3年夏、県大会3回戦で負けたことです」
懇親会前日、編集部では埼玉展望号の企画会議を開いたばかりで、「あの夏のHERO」で、小島への取材を考案していた。取材申請書を野球部へ提出しようとしていた矢先での発言であったのだ。
壇上から降りてくると、すぐさま小島に接触を試み、今回の取材趣旨を説明した。すると、その場で詳細を話し始めそうになった。「インタビュー時にゆっくり、お願いします」。受け答えも爽やかで、律儀な好青年である。
県大会3回戦敗退。周囲は「波乱」「まさかの」と表現したが、小島自身の中では、振り返れば「必然」だった。この敗戦が、その後の野球人生に生かされているという。
好結果を残すと、実は克服しなければならなかった課題を、置き去りにしてしまうことがある。負けから得るものは大きい。小島が言う「敗因」は、技術的なことではなかった。つまり、学校生活、私生活が野球につながるというもの。経験者の言葉は、現役高校球児にも参考になると思う。
文=岡本朋祐 写真=BBM