早実の甲子園進出へカギを握る雪山
2017年夏――。早実のスラッガー・
清宮幸太郎(3年)が全国でも注目度No.1だが、野球は投手を中心とした守りの安定が必要不可欠である。
夏は2年ぶり、今春のセンバツに続く甲子園出場へ、早実に頼もしき新エースが誕生した。
今夏から背番号1を着ける右腕・
雪山幹太(2年)。7月15日、第1シードで初戦となった都立南平との3回戦に8回2失点の好投で、チームに白星(9対2、8回
コールド)を呼び込んだ。
1年秋からマスクをかぶり、守りだけでなく、二番打者として左打席からシュアな打撃を披露していた雪山。秋春連覇を遂げた東京大会までは捕手だったが、関東大会では中堅、そして同大会後は投手にコンバートされた。
春の公式戦は打線が活発だった一方、大量失点の展開が多く見られた早実は、投手陣育成が急務となっていた。そこで中学時代(神戸中央シニア)で投手経験のある雪山に白羽の矢が立った。沖縄、愛知、香川での招待試合を通じて和泉実監督から「完投能力がある」と信頼を得て、2年生に背番号1が手渡された
「捕手、センターをやっているときに投手に戻りたいとは思わなかったが、今はピッチャーとして楽しくやらせてもらっています」
ただ、南平戦は“野手上がり、公式戦初先発、下級生”と不安要素が多い雪山に対して、泉監督の胸中は「表と出るか? 裏と出るか……」。しかし、試合後には「思いのほか、落ち着いていた。雪山の成長なくして、安定したゲームは展開できない。一人で投げ切れたことは大きな収穫」と指揮官はホッと胸をなで下ろしていた。
だが、雪山の自己採点は「40〜50点」と厳しかった。
「下級生でもチームの代表として“1”を着けている。ベンチ入りできなかった3年生の思いも背負っており、負けることはできない。最後まで勝ち続ける」
バッテリーを組むのは今春、三塁から捕手にコンバートされた2年生・
野村大樹。同じ関西出身の2人は入学時からコンビを組みたいと思っていたという。雪山は「サインも1、2回で決まる。リズムよく投げられる」と、呼吸はバッチリだ。
野村はこの試合、相手打者のバットが顔面(鼻部分)に当たり、大事を取って途中退場。4回戦(7月17日)に出場できるかは今後の経過を見て決めるが、「雪山−野村」の2年生バッテリーが早実ディフェンスのカギを握っていると言っていいだけに、復帰が待たれる。
文=岡本朋祐 写真=佐藤博之