2015年夏の甲子園、平沢は3本の本塁打を放ってチームを決勝へ導いた
2015年の夏。準決勝までの5試合で放った安打は計4本。しかし、そのうち3本はインパクト十分の本塁打だった。圧巻は1年生・
清宮幸太郎を擁する早実との準決勝。4回表、右中間最深部に3ランをたたき込み、試合を決定づけた。
「甲子園で3本打てたのは自分でもビックリ」と語った仙台育英高の
平沢大河は、華麗なグラブさばきと一歩目の反応の速さによる好守備も相まって、大会最強遊撃手の称号を確固たるものとしていた。
しかし、悲願はかなわなかった。平沢は東海大相模高との決勝でも2安打と存在感を放ち、何よりチームが粘りを発揮した。3回までに4点を先行されながら、その裏に3点をかえし、さらに3点差に突き放された6回裏にも3点をもぎ取って同点に追いつく。大会NO.1投手と言われた左腕・
小笠原慎之介(現・
中日)に食らいついていった。
だが、最後は平沢と並びチームの屋台骨を背負ったエースの
佐藤世那(現
オリックス)が限界を迎える。同点の9回、先頭の小笠原への初球フォークが高めへ浮くと、フルスイングでとらえられた打球は右中間スタンドへ吸い込まれる。さらに3点を失って、6対10で敗戦。平沢と仙台育英高の夏は終わった。
「優勝旗は白河の関を越えるか」。毎年繰り返されるフレーズ、東北勢にとっての悲願。生まれも育ちも宮城の平沢にとってもそれは同じだったはずだ。「東北地方の強さを証明する」と決勝に挑んだが、栄冠にはあと一歩で届かなかった。
それでも、この夏が今につながる平沢の大きな糧となっていることは間違いない。「悔しい」とこぼしたあと、「すべてにおいてレベルアップして、これからはプロを目指して頑張りたいと思います」。そう言葉を続けていたのだから。
その秋、
楽天との競合の末、
ロッテへ入団。プロ入りという最初の関門は通過した。だが、2年目を迎えた今季も苦闘は続いている。守備面では持ち前のセンスを随所に発揮できるようになったが、打撃面ではまだプロのスピードに対応し切れていない。2年前に掲げた「すべてにおいてレベルアップ」という言葉。同じ意味のフレーズを、今でもことあるごとに口にしている。夏の甲子園を経て、上がったステージと目線。平沢の挑戦は続いている。
写真=高原由佳