
花咲徳栄は埼玉県勢初の全国制覇を達成
99回目を数えた大会の歴史に新たな1ページが記された。
8月23日、夏の甲子園決勝で花咲徳栄が広陵を14対4で下し、埼玉県勢として初の全国制覇を遂げた。
花咲徳栄は春のセンバツを通じて、これまで8強が最高成績。だが、初の決勝を前にしても、岩井隆監督は冷静だった。
「埼玉の悲願は、私たちの心の中にある。大事なことは、自分たちの力をいかに引っ張り出すか――。日本一に惑わされないように、先のことは考えず、瞬間を大事にしていきたい。仮に負けても一つの勉強なので、ここにいることを経験として積み上げていけばいい」
形を変えないこと。これが今夏、岩井監督のポリシーだった。野手は「1回から9回まで攻める」ことが約束事である。しかし、ガムシャラにということではなく「思い切ってやれ!! と言いたいところですが、自由と勘違いすることがある。素直な子たちなので……。覚悟を決めて、手綱を締めて、したたかに最後までプレーしてほしい。試合巧者として流れをつかんでいきたい」。
2015年は東海大相模・
小笠原慎之介(現
中日)、2016年は作新学院・
今井達也(現
西武)と全国制覇を遂げた投手を打てずに惜敗。この1年間、甲子園で勝つための打力を磨き、3年連続での甲子園出場。広陵との大一番でも得意の先制攻撃で主導権を握った。
投手陣は背番号10の
綱脇慧から背番号1の
清水達也へつなぐ必勝パターンを確立。内、外野も堅守でピッチャーをもり立て、3年生右腕2人も力を合わせ、27個のアウトを積み上げた。
初優勝のお立ち台で岩井監督は言った。
「日本一ということは富士山と同じなので、一歩一歩、登るということ。一瞬一瞬、一球一球が、一歩だと思ってやっていこうと言いました」
全国3839校の頂点。花咲徳栄は深紅の大優勝旗を初めて、埼玉へ持ち帰る。
文=岡本朋祐 写真=高原由佳