進路の選択肢が幅広い清宮

その進路が注目される清宮
その進路をめぐって、かくも想像力をかき立てられる高校球児がほかにいるだろうか。
早稲田実業の
清宮幸太郎。
昭和の時代の球界では、プロ志望届というものが存在しなかったため、ドラフト指名候補の高校生の意思はマスコミの取材を通してアナウンスされ、「在京セ・リーグ以外なら進学」といった見出しがドラフト前のスポーツ紙に躍ったものだった。進学を表明していた高校球児をプロ側が強硬に指名、交渉で翻意させてプロ入りとさせたケースも少なくない。
それが、いまではプロ入りを希望する高校生はプロ志望届の提出を義務づけられたため、これを出さない選手はプロが指名することはできなくなった。
そういう意味で近年のドラフトは、甲子園を沸かせたヒーローが「どの球団に指名されるか」という興味の前段階として、「プロ志望届を出すか否か」が脚光を浴びることになった。
2006年には「ハンカチ王子」こと早実・
斎藤佑樹が、テレビカメラ3台が生中継するなどの過熱報道の中で、「プロ志望届は出しません」と、自らの意思を表明した。その斎藤と同じ道を辿るかどうかはまったく予断を許されないが、この秋、清宮の進路に熱視線が注がれるのは必至だ。
特筆されるべきは、清宮の場合は、同じ進路でも選択肢が幅広いことだ。
プロ入り、早大進学、プロ野球の世界でプレーしながら早大のインターネットによる通信教育であるeスクール、さらにはいきなり海を渡って将来的にメジャーを目指すという選択肢も一部で報じられた。
一昔前は、プロか進学、社会人の3択だったことを思えば、時代も変わった。
最終的に決断するのは本人にほかならないが、どの道に進むにしても、野球ファンはもちろん世間一般層までが心を躍らせるという点で、やはり清宮幸太郎という存在は非凡な存在だと思わずにいられない。
怪物の無限の未来

『ベースボールマガジン』10月号では清宮を特集している
清宮の進路表明は、9月1日(現地時間)からカナダで開幕するU-18ワールドカップ終了後ともされている。明確な答えが出るまでのいまのこの時期こそ、清宮の取り得るさまざまな選択の向こうに広がる可能性をあれこれ想像できるのではないか。ということで出来上がったのが『ベースボールマガジン』10月号の清宮特集「怪物の決断~清宮幸太郎は何処へ」である。
同誌では、
張本勲氏が清宮の連続写真を通して怪物を打撃分析、「喝か、あっぱれか」評しているのと同時に、「絶対にプロに行くべきです」とプロ入りのススメ。「ワンちゃん(
王貞治氏)の868本を超える大打者になってほしい」とエールを送る。一方、清宮の父・克幸氏と早大で同期だった
小宮山悟氏(元
ロッテほか)は「六大学で大活躍してから日本のプロへ行きなさい」と早大進学を望んでいる。
ほかにも、清宮のリトル時代の恩師である北砂リトルリーグ・日高淳二監督や、週ベONLINEで募集した「清宮の進路 アナタはどこに行ってほしい?」に対する“世論調査”など、この一冊には、清宮の未来に関して、いろいろな意見が述べられている。
この時期だからこそ楽しめる怪物の無限の未来へ思いを馳せていただくとして、渦中の人は一体、どの道へ進むのか。
「この道を行けば
どうなるものか危ぶむなかれ
危ぶめば道はなし
踏み出せばその一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ
行けばわかるさ」
アントニオ猪木によって有名となった、この詩をいまこそ平成の怪物に送りたい。
文=佐藤正行(ベースボールマガジン編集長) 写真=BBM