現地時間9月1日から始まる「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」。清宮幸太郎を主将とした“高校生ジャパン”がカナダで世界を相手に奮闘を繰り広げる。悲願の世界一へ――。若きサムライたちの戦いを追う。 木製バットでも鋭いスイング

オーストラリア戦でサヨナラ打を放った安田
11回裏一死満塁。3対3と、一打出ればサヨナラの場面である。
打席には三番・
安田尚憲(履正社)が立ち、九分九厘、試合は決まったと思った。相手投手をのみ込んでしまいそうなオーラが漂っていたのだ。カウント2ボール1ストライクからの4球目、痛烈な打球はセンターへ抜けていった。
オーストラリアとのスー
パーラウンド初戦、3時間19分の熱戦をタイブレーク(延長10回から無死一、二塁でスタート)の末に制した(4対3)。カナダ入りしてから大会6試合目、安田は初めて試合後のヒーローインタビューに指名された。
「これまでチームに貢献できていなかったので、日本の勝利に貢献できてうれしい。投手陣が粘って2イニング(10、11回)を抑えていたので、あとはバッター陣がやらないとダメだ、と。1本出せて良かったです。頼もしいメンバー20人で、チーム一丸となっている。世界一まで一歩一歩、進んでいきたい」
オーストラリア戦を含め、6試合で安打がなかったのは、オープニングラウンドのアメリカ戦のみ。本塁打こそ出ていないが、木製バットでも鋭いスイングで勝負強い打撃を見せてきた。大会前は早実・清宮幸太郎(109本塁打、カナダで1本を加えて現在は110本)、広陵・
中村奨成(44本塁打)とともに「高校通算218発クリーンアップ」と騒がれた。清宮と中村が本来の実力を出し切れない中、安田(65本塁打)はコツコツと結果を積み上げてきた。
188センチの大型三塁手。オープニングラウンド5試合を視察した
巨人・
井上真二チーフスカウトは安田の堂々とした姿を見て「高校当時の松井(秀喜)みたいですね」と日米通算507本塁打の左の大砲に重ね合わせていた。スケール感だけではなく、視野が広く、常にフォア・ザ・チームの真摯なプレースタイルも、確かに“ゴジラ”の系譜をたどっているように感じる。
大会予備日だった前日。オープニングラウンド5連戦を終えた安田に、疲労度を聞いた。
「トレーナーさんからも細心のケアをしていただける。体的には問題ありませんが、精神的にはかなり、きています」と語った。日の丸の重みは相当のようだ。しかし、プレッシャーをはねのけるだけの心と技術が、安田にはある。世界一まで残り3戦。待望の一発が飛び出しそうなムードがプンプン、漂ってきている。
<次回に続く>
文=岡本朋祐 写真=早浪彰弘