
快足を生かしたスピード感あふれるプレーに評価が高い丸山
今回の侍ジャパンU-18代表で、「コメント力」においてNo.1は
丸山和郁(前橋育英高)である。今夏の甲子園での“絶口調”ぶりは、報道陣の間でも話題だった。山梨学院高との1回戦。一番・丸山は50メートル走5.9秒の快足を飛ばし、1試合4盗塁を決めた。しかも、そのうち2つは三盗で、走塁技術、判断力の高さが証明された。
仲間を気遣う姿勢を「言葉」で表現した。主将・
飯島大夢三塁手は左手首を骨折しながら強行出場。一方、丸山は1回戦の1回に右手に死球を受け、患部はやや腫れていた。また、6月には右肩を脱臼し、県大会でも2回、痛めており自身も満身創痍の状態である。にもかかわらず「痛み? 自分が10なら飯島は100です。無理をしてほしくないですが……尊敬します!!」と、優しい一面を見せた。
前橋育英高は3回戦へ進出し、丸山は大会タイ記録の8盗塁をマークし、甲子園の歴史にその名を刻んだ。
丸山の本職は中堅手だが、投手も兼任していた。
「甲子園のマウンドはアッツイですよ。センターのほうが風通しは良い。相手の応援を聞きながら守れますし!!」
試合中盤に救援する機会が多く、投手としての調整法を聞けば、「センターでグルグル腕を回すだけです」と、ユニークな回答。甲子園では控え目な発言に終始する球児が多い中で、丸山はすべてオープン。
大勢の報道陣が取り囲んでも「人見知り」とは無縁なのである。本音を話してくれる、これほど、ありがたい取材対象はいない。
俊足好打に加え、最速144キロ左腕の万能選手。今回の侍ジャパンU-18代表はメンバー20人と限られており「複数ポジション」が要求される中では、丸山のプレースタイルはうってつけの存在であった。
しかし、明徳義塾との2回戦で左足首をねんざ。8月22日の侍ジャパン合流後は治療をまず優先させ、練習試合も一塁コーチャーがメーンで、様子を見ながらの出場だった。しかも、国内合宿期間中は体調不良で一時離脱するなど、やや精彩を欠いていた。
カナダ入り後、ようやくコンディションが戻り、アメリカとのオープニングラウンド第2戦から先発起用された。そして、3対1と辛勝したオランダとの第4戦では「八番・中堅」で出場して盗塁、好走塁など2得点に絡む活躍。ようやく、丸山らしいプレーが戻ってきた。
となると、試合後の談話も完全復調。この大会の取材方法は移動バスの出発前に、対象選手をつかまえる“囲み取材”の方式が取られていた。そして、丸山は初めて“指名”された。一連の好プレーに関する質疑応答が終わると、こう言った。
「久しぶりっすね、取材。甲子園以来っすね」
誤解してはならないのは、あくまで素直である、ということだ。ついに、カナダでも“丸山節”が聞け、担当記者たちも胸をなで下ろしていたほどの愛されキャラなのだ。
9月7日からのスー
パーラウンドを前にして、侍ジャパンU-18代表の小枝守監督は「(守れる二塁手)西巻と(足と外野守備が抜群の)丸山の復帰が大きい」と、故障明けの2人を名指しし、チームの起爆剤となっていることを認めた。
丸山は高校卒業後、大学進学を志望している。神宮のフィールドを疾走する日が、今から楽しみ。活躍した試合後はその「コメント力」にも引き続き、要注目である。
文=岡本朋祐 写真=BBM