現地時間9月1日から始まる「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」。清宮幸太郎を主将とした“高校生ジャパン”がカナダで世界を相手に奮闘を繰り広げる。悲願の世界一へ――。若きサムライたちの戦いを追う。 「秀岳館コンビやから、任せろ!」

韓国戦、2番手で登板し、好投した川端
決勝進出へ、勝つことが絶対条件の「日韓戦」。
試合前練習を終えた小枝守監督は、サブグラウンドからメーン球場まで向かう間に「明日のこと(決勝)は考えられない」と言った。もう、後がない。その言葉の真意を知ったのは、メディアセンターで先発オーダーを見たときだった。
「田浦!?」
田浦文丸(秀岳館)の先発に、報道陣は皆、驚きの声を上げた。何しろ、ここまで7試合中5試合に救援するフル回転。12回3分の1で無失点に抑え、27奪三振と「日本の救世主」となっていたが、まさかの先発起用である。実は裏事情があった。
もともとは
川端健斗(秀岳館)が予定されていたが前日、救援したカナダ戦で打球を右足に受けるアクシデント。「超回復」(小枝監督)と問題はなかったものの、指揮官はさすがに先発起用には踏み切れなかった。そこで「振ってくるチーム。消去法でそうなった」と、スクランブルにも対応できる、頼みの田浦にすべてを託す展開となったのである。
しかし、さすがに無理があった。2回途中5失点降板。田浦の後を受けたのが川端だった。
マウンドでは、2人しか分からないこんなやりとりがあった。
「ごめん」(田浦)
「秀岳館コンビやから、任せろ!」(川端)
右足にテーピングを巻きながら、川端は力投を見せた。4回に追加点を奪われたものの、8回まで一人で投げ切った。
「今までずっと、秀岳館の2枚看板としてやってきて、田浦の分もカバーしてあげないといけないという思いで投げた。投げてベンチへ戻ってきてからも、しっかりサポートしてくれて心強かったです」
2人は秀岳館で2年春から今夏まで、4季連続で甲子園出場。3年生となってからは両左腕の継投で勝ち上がってきただけに、カナダでもその“絆”は強固であった。田浦と川端からは闘志、そして決してあきらめない姿勢を見せてくれた。韓国との大一番で敗れた(4対6)が、侍ジャパンU-18代表に残した“財産”は、次なる世代へと継承されるはずだ。
<次回に続く>
文=岡本朋祐 写真=早浪彰弘