
清宮の後を受けて就任した早実の新主将・野村(右端)はリーダーシップを発揮している
立場が人を作る。あの夏から約2カ月ですっかり、リーダーの風格が漂っていた。早実・
野村大樹(2年)はこの秋、1学年先輩の
清宮幸太郎(3年)から主将の座を引き継いだ。
今夏の西東京大会は東海大菅生高との決勝で敗退。新チームからリーダーとなり、新たなスローガンとして『一闘勝笑(いっとうしょうしょう)挑戦者であれ』を決めた。1球、1プレーにこだわりを持ち、闘争心を忘れない。そして、試合は勝って笑う、という意味が込められている。すべては今夏の黒星から得た課題であり、悔しさを忘れないために、チーム全員で共有しているという。
ブロック予選2試合を勝ち上がり、10月9日に東京大会本戦を迎えた。地力のある東京実との1回戦は10対0の5回
コールド勝ち。早実は攻守に圧倒し、試合後に野村が「自分たちの野球ができた。ここまでは予想していなかった」と驚くほど、最高の滑り出しとなった。
「三番・捕手」で先発した野村は3安打1打点。第1打席で目の覚めるような痛烈なライナーを中堅へ運ぶと、技ありの右前打、しぶとく三遊間を破る左前打と持ち味を発揮した。
高校通算48本塁打。待望の一発は出なかったが、これも夏の経験が糧としてある。
「狙っているわけではないですが、夏まではホームランを意識してきました。でも、新チームからはつなぎ、つなぎの意識で、ヒットの延長がホームランだと考えています」
早実と言えば、伝統の強力打線が看板だが「今年のチームは清宮さんのような(一発で決められる)バッターはいない。理想は守りの野球」と言い切る。攻撃は全員が束となって攻めていくスタイルを目指しており、その象徴がキャプテン・野村である。
高校1年の5月から不動の四番も、今秋からは清宮の指定席だった三番に変わった。
「必ず初回に回ってくるので、気が楽です」
今夏まで清宮の後を打つ四番を「一番、難しい打順ですが、誇りに思う」と語っていただけに、今度は“自分の世界”を作り上げるに違いない。
NPBスカウト注目の強打捕手でもある野村。清宮の「プロ志望」には刺激を受けており「後ろで打てたことは自信になる」と語り、「いずれは一緒にやりたいです」と将来的な夢を話した。
早実・和泉実監督は野村のキャプテンシーについて、こう語る。「(自分の世界に)入ってしまうタイプ。周りが見えないところがあったが、しっかり声かけもできるようになった。清宮の後ろ姿を参考にしてきた中で、野村にも独自性がある。成長している」と新リーダーのステップアップに目を細める。
さて、来春のセンバツヘ重要な資料となる東京大会は始まったばかり。早実は2回戦で強豪・関東一高と対戦する。昨秋は準々決勝で勝利し、勢いに乗った相手だ。野村も「ヤマ場」と語っており、10月15日(神宮第二、10時試合開始予定)は注目の一戦となりそうだ。
文=岡本朋祐 写真=矢野寿明