
ショートを任された際、お手本として茂木の頭に浮かんだのは松井稼頭央だったという
楽天の
茂木栄五郎の進化が止まらない。今季は負傷離脱などもあったが、主に一番を任され、球団初の生え抜き選手の2ケタ本塁打をマーク。10月15日
西武とのCSファーストS第2戦(メットライフ)では初回に先頭打者として初球本塁打、18日
ソフトバンクとのファイナルS第1戦(ヤフオクドーム)でも初回に先頭打者弾を放ち、チームはいずれも勝利を収めた。茂木のバットがチームの躍進に大きく貢献していることは言うまでもない。
だが、今年の成長は守備にあったとチームメートは言う。二遊間を組む
藤田一也は「連係プレーも去年に比べてスムーズにできているし、今年は『僕が行きます』と言う機会も増えている」と話す。昨年、送球も含め、すべて100パーセントでプレーしていた茂木を見て「疲れるだろうな」と藤田は思っていたそうだが、今年はプレーに余裕が出てきたと感じている。「余裕はないですよ」と茂木は笑うが、昨年から大きく成長を遂げた。
「去年に比べたら(守備に就いた際)断然落ち着いているよね」と話すのは松井稼頭央だ。「ショートというポジションで、あれだけの率、ホームランを残せる選手って、少ないと思うんですよね。そういう意味では、僕もどちらかというとそういうタイプだった」と自身と重ね合わせ「成長ってすごいなと思いますし、それだけの努力があったからだと思います。これからどういう選手になるのか見ているほうが楽しみですけどね」と目を細めた。
昨年のタイムリーエラーが茂木の意識を変えた。
「自分のミスで失点し、負けてしまった試合があったんです」
開幕から出場を続けていたことによる疲労と打撃不振も重なっていたとはいえ、1つのミスが流れを変えてしまうことを痛感した。
「うまくなって、チームの勝利に貢献したいと、あらためて思ったきっかけになりましたね」
アマチュア時代は主にサードを守り、プロ入り直後にショートへコンバート。それでも言い訳することなく、自分のミスで敗れた試合を胸に刻み練習に励んだ。打撃での活躍が目立って見えるが、その裏には底知れぬ守備での努力があったのだ。
文=阿部ちはる 写真=BBM