
6回二死一、二塁で宋の152キロのストレートに見逃し三振に倒れた松田。捕手・嶋はガッツポーズ
■10月19日 CSファイナルステージ第2戦(ヤフオクドーム)楽天2-1ソフトバンク ここに来て新たな勝ちパターンを手に入れた楽天と、ストロングポイントが仕事を果たしているのに勝利を手にできないソフトバンク。勝敗だけでなく、大きな流れも楽天に傾きつつあるのかもしれない。
パ・リーグのCSファイナルS第2戦は2対1で楽天が競り勝った。相手のミスにつけ込み1回に早々と先制すると、4回に
内川聖一の2戦連続弾で追いつかれたものの、
嶋基宏が意地の決勝適時二塁打を放ち7回に勝ち越し。リリーフ陣が最少リードを守り切った。
日本記録更新の54セーブを誇る守護神・
サファテを筆頭に、盤石を誇るリリーフ陣から逆算するゲームマネージメント。それが今季のソフトバンク最大の強みだ。事実、第2戦も7回一死二塁で登板して火消しに成功した
モイネロから
森唯斗、
岩嵜翔と完ぺきに任務を遂行した。
しかし、リードを奪った勝ちパターンで登板してこそ、その真価が発揮される。この2戦、ソフトバンクがリードした局面は一度もない。ソフトバンクとしては、第3戦でなんとしても楽天先発・
則本昂大から先取点を奪わなければならない。
ソフトバンクの先発はケガからの復帰後、確かな安定感を誇る
和田毅だ。回が浅くとも、先制した瞬間に「勝ちパターン」へ入ることができる。ここまでの3得点はすべてソロ本塁打によるもの。“打”を“線”にして先制点をもぎ取ることが求められる。
一方の楽天も自慢の爆発力が発揮されたわけではない。それでも第2戦で決勝点の足掛かりとなったのは、
聖澤諒が内野安打をもぎ取った執念のヘッドスライディングだった。楽天打線の強みは、爆発力とともにチャンスを逃さず畳み掛ける粘り強さと集中力。その一端を見せつけることで2勝目を手繰り寄せた。
何より大きいのはロースコアを勝ち切るだけのリリーフ陣の存在だ。左キラーも兼ねる
高梨雄平、絶対的セットアッパーの
福山博之に加え、第2戦では
宋家豪が躍動した。同点の6回一死二塁で登板すると、150キロ超のストレートを連発して内川を空振り三振、
松田宣浩を見逃し三振に斬って取り、嶋の決勝点を呼び込んだ。
終盤戦はケガの影響もあって不安定だった
松井裕樹も、キレ味鋭いチェンジアップを軸に9回を3奪三振で締めた。ストレートの球威が戻りつつあるのも心強い。ソフトバンク同様、リードを奪えば「後ろからの逆算」が成り立つ陣容が整った。
「これでやっと五分になったかな」。慎重な言葉を選ぶ
梨田昌孝監督が試合後、ソフトバンクに肩を並べたと口にした。それは決して星勘定だけの話ではないだろう。王者とリーグ3位の間の壁は取り払われた。ファイナルS突破へさらに一歩近づくために。第3戦の焦点は“先制点”で間違いない。
文=杉浦多夢 写真=湯浅芳昭