
試合を決めた中村晃を工藤監督は歓喜の表情で出迎えた
■10月20日 CSファイナルステージ第3戦(ヤフオクドーム)ソフトバンク7-5楽天 意外な打ち合いの末にソフトバンクが第3戦を制し、アドバンテージを含め対戦成績を2勝2敗のタイに戻した。5対5の同点で迎えた8回二死一塁、楽天の2番手の
福山博之から“七番”中村晃がライトスタンドに弾丸ライナーを突き刺す決勝2ラン。9回はこのファイナルSで初登板となった
サファテが締めた。
ソフトバンク攻撃陣が息を吹き返したのは、打順の組み替えによるところが大きい。この2戦、ソロ3本による3得点に終わっていた打線をテコ入れした。好調の
今宮健太を一番に据え、二番には
城所龍磨を抜てき。三番に
デスパイネを起用して中村晃は七番に下げた。これが見事にはまる。
1回、中前打で出塁した今宮を城所が犠打で送り、デスパイネが右前へ同点適時打。2対3とリード許した3回には先頭の城所が一塁線を破る二塁打を放つと、デスパイネが四球でつなぎ、
内川聖一の3戦連発となる逆転3ランを呼び込んだ。
そして中村晃だ。「七番に中村がいれば相手も気が抜けない」という
工藤公康監督の思惑通り。前日の第2戦では送りバントを失敗するなど「僕のせいで負けた」と責任を感じていた男が、8回に決勝弾を放った。七番という打順に「ちょっと楽になった」とメンタル面で好影響があったことも見逃せない。
一方の楽天も3戦連続で1回に先制点を奪い、2回は集中打で2点を重ね、5回には
アマダーに一発と、攻撃陣の状態は悪くない。ソフトバンク自慢の中継ぎ陣が投入される中盤以降になると沈黙してしまうのは気掛かりだが……。
両チームとも打線が上向きとくれば、第4戦はソフトバンク・
バンデンハーク、楽天・
岸孝之の先発の出来が試合の行方を左右するだろう。前者はこれまでポストシーズン通算4戦4勝、防御率1.38と無類の強さを誇り、対する後者は今季ヤフオクドームで3試合に先発して2勝1敗、防御率1.29と安定したピッチングを繰り広げている。
中継ぎ陣に目を向ければ、先に綻んだのは楽天だった。いずれも3連投となったセットアッパーの明暗は象徴的だ。楽天・福山は決勝弾を浴び、ソフトバンク・
岩嵜翔は3試合連続無失点で勝利投手となった。
さらに言えば、ここまでソフトバンクの失点はすべて先発投手のもの。中継ぎ陣は完ぺきに任務を遂行している。「リードを許すわけにはいかない」というプレッシャーがより大きく圧し掛かるのは岸ということになるが、果たして――。
文=杉浦多夢 写真=前島進