今年のドラフト会議が10月26日に行われた。清宮幸太郎(早実)は7球団の競合となり、日本ハムがクジを引き当てた。第1回のドラフト会議から回顧してきた当連載、今年のドラフトを振り返って最終回とする。 「(明石家)さんまさんに左手で引け、と」

見事にクジを引き当て清宮の交渉権を獲得した日本ハム・木田GM補佐
2017年10月26日
第53回ドラフト会議
(グランドプリンスホテル新高輪)
[1位選手]
ロッテ 安田尚憲(履正社高)
ヤクルト 村上宗隆(九州学院高)
日本ハム 清宮幸太郎(早実)
中日 鈴木博志(ヤマハ)
オリックス 田嶋大樹(JR東日本)
巨人 鍬原拓也(中央大)
楽天 近藤弘樹(岡山商科大)
DeNA 東克樹 (立命館大)
西武 齊藤大将(明治大)
阪神 馬場皐輔(仙台大)
ソフトバンク 吉住晴斗(鶴岡東高)
広島 中村奨成(広陵高)
今回は10月26日に行われたドラフト会議の1位指名だけをクローズアップして紹介する。
会場には、新任のヤクルトの
小川淳司監督、ロッテの
井口資仁監督、さらに日本シリーズを直前にしたDeNAの
ラミレス監督、ソフトバンクの
工藤公康監督ら全チームの監督も顔をそろえた。
注目は、清宮幸太郎、中村奨成、安田尚憲の高校生スラッガー3人。特に複数球団の競合が予想された清宮の行方だった。
1巡目はパの最下位から指名がスタートし、ロッテ、ヤクルト、日本ハムと3球団続けて清宮。続いて中日が中村奨成、オリックスが田嶋大樹を指名するも巨人、楽天も清宮指名。楽天は投手重視の傾向があり、ドラフト会議の1位で野手を獲得したのは15年の
オコエ瑠偉だけだ(外れ1位)。
DeNAが東克樹で、1位では唯一の単独指名。まずは交渉権確定だ。15年の
今永昇太、16年の
濱口遥大に続き、またも左腕の1位指名となる。ラミレス監督は、「優勝するための最後のピースになる。優勝するために君が必ず必要になります。ようこそDeNAへ」と、まだ実戦を残す指揮官ならではの熱いコメント。東は「まさか1位とは思わなかった。MAX152キロのストレートが注目されていますが、自分の売りはコントロール。小柄(身長170センチ)でも、ここまでやれることを見てもらいたい」と緊張の表情ながら強気に語った。
西武が田嶋の後、阪神、ソフトバンクも清宮。これで清宮は7球団指名となり、高校生野手では1995年、PL学園高の
福留孝介に並ぶ最多タイとなった。最後の広島は事前に明言していたとおり、地元の中村だ。
まずは清宮の抽選が行われ、日本ハムの
木田優夫GM補佐が交渉権確定を左手で引き当てた。会場でのインタビューで「(明石家)さんまさんに左手で引け、と言われたんで」と最初に笑いを取った後、「日本球界の宝。どうしても来てほしい選手です。ぜひファイターズに来てください」と語った。日本ハムは清宮サイドとの事前に面談に参加していなかったが、清宮は「やっとスタートラインに立てたと思います。自らを鍛錬し、みんなに目指されるような選手になりたい。高校野球の中で111本(本塁打)は残せましたが、プロの世界はまったく別と思っているので、甘んずることなく、自分に磨きをかけたい」と終始笑顔で会見。すんなり入団となりそうだ。

ロッテが交渉権を獲得して、笑顔を見せた安田
続いての抽選は中村。青々と頭を剃りあげた中村がモニターで見守る中で当たりクジを引き当てたのは広島・
緒方孝市監督だ。「ホッとしました。獲得できて幸せです。厳しく育ててくれと言っていたようなので、ウチにぴったりです。早く会いたいです」。中村も「幸せな気持ちです」と語りながら「捕手ひと筋でプロでもやりたい。(小林)誠司さん(広陵高OB。現巨人)にあこがれてきたので、誠司さんを人間的にも超えられるような選手になりたい」ときっぱり言い切る。
田嶋の抽選では、オリックスが当たりクジ。「ホッとしています。1年目からローテーションに入ってきてくれると期待しています」と語った
福良淳一監督は、この日、スポーツ新聞の占いで、運勢が一番よかったという。
続いて外れ1位に入り、ロッテが安田尚憲、ヤクルトが捕手の村上宗隆、中日が社会人の剛腕・鈴木博志、巨人、楽天が村上、西武がスライダーが武器の左腕・齊藤大将、阪神、ソフトバンクが安田となり、まず鈴木、齊藤は交渉権確定となった。
安田の抽選で当たりクジを引いたのはロッテだ。安田は「持てる力を100パーセント出したい。井口監督の下でプレーできるのは楽しみです」と大物感たっぷりの笑顔で語った。
強肩強打の捕手・村上の抽選では、ヤクルトが交渉権確定。小川監督は「球界のクリーンアップを打てる逸材だと思います」と期待を語った。
外れ外れで巨人は安定感が評価される鍬原拓也、楽天は快速球右腕・近藤弘樹で、ともに交渉権確定。阪神、ソフトバンクは最速155キロ右腕・馬場皐輔でまたも競合した。工藤監督、
金本知憲監督も「またか」とばかり苦笑いしながら3度目の抽選に立ち、阪神が交渉権を確定。「ウチは先発が足りないんで、1年間きっちり働いてくれる勝てるピッチャーになってほしいですね」と金本監督。馬場は緊張の面持ちで「金本監督さんからいろいろ学びたいです」と初々しく語っている。
最後の最後でソフトバンクが指名したのが、鶴岡東高の吉住晴斗だ。工藤監督は、「僕が現役(西武時代)のときの
渡辺久信投手のようなタイプだと思っています」とコメント。吉住は「こんなに早く指名してもらえると思っていなかったので、びっくりしました。期待に応えられる選手になりたいです」と、興奮気味。指名は確実だったが、1位はサプライズだ。
1位選手に限らない。彼らがこれからプロでどのような活躍を見せてくれるのかはまったく未知数。それはこの連載をご愛読いただいた皆さんならお分かりだろう。
長らくご愛読いただいた「ドラフト物語」も、これが正真正銘の最終回となる。来年はまた、違った形でのドラフト連載を企画しています。ご期待ください。
<完>
写真=BBM