
本塁打後にベンチ前で安達(左)と行うパフォーマンスは、すっかりおなじみに
自ら歩み寄って声をかける。言語は通じなくても、バットを手にし、ジェスチャーで意志の疎通を図る。互いの笑顔が心の近さを物語っていた。
「ごく自然なことだよ。チームに溶け込もうとか、何かを教えたり、教えてもらったり、そういうことではないんだ。積極的にコミュニケーションを取ろうと思ったことはないんだよ」
オリックスに今季加入した
ロメロの試合前練習を見ていると、打撃ゲージの後ろでT-岡田や
吉田正尚に歩み寄って声をかけているのが目につく。その光景は来日1年目の今季、もっとも大事にしていたことに通じる点でもあった。
「日本の投手は変化球が豊富だね。その変化球にどうやって対応するか学びながらプレーしていたんだ」と語るロメロが強調したのは『過程』だ。
「結果を出すために“プロセス”を楽しみながら1年間プレーしたんだよ」
だから“何かのため”に動くことはない。ファンやベンチは長打を期待するも、本人は「ボールを強くたたくことだけを考えていた。その結果が26本の本塁打につながったよ」と言い切る。
そもそも、初めての日本の地。チームのことは当然、すべてにおいて右も左も分からぬ状況だ。その中で
ディクソンやモレルら“先輩助っ人”にアドバイスをもらい、“学ぶ”ことを楽しんだ。
「シュンタ選手(
駿太)とブランコ選手がやっている昔の映像を見て、シュンタ選手やアダチ選手(安達)とマネをしていたんだ」というのがきっかけで始まった本塁打後に
安達了一と行うパフォーマンスも「ベンチの中でやるつもりだったんだけど、アダチ選手がベンチの前に出てきたから」と自然の流れで行うようになったという。
自然体で何を感じ、そして得た経験をどう生かすのか。日本野球に“順応するため”ではなく、学びながら残した好成績は、来季につながるものとなる。
「1年間(シーズン)の流れ、対戦相手や球場などの環境が知れたことは大きいと思うんだ。来年は『次はこうなる』と先が読めるようになれるからね。この1年間で経験できたすべてのことが大きいよ」
真面目さと明るさが調和する助っ人。今季の成績は来季、さらなるブレークの肥やしとなる。
文=鶴田成秀 写真=佐藤真一