2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『今週の話題』は『前代未聞の内野犠飛』
今回は『1958年7月16日号』。創刊第14号で定価30円。カラーページはない。
この号は、2週前で告知された『ホームラン・クイズ』第1回の当選者が早くも発表されている。昔の記事とは言え、ここで当選者の個人名を出すのは控えるが、なんと応募総数は9万6853通! これはスゴい。正解者は10人ということで、10万円を10等分して送ったとのことだ。
ただ……、大先輩たちを疑う気はまったくないのだが、9万通以上の手紙・ハガキを果たして本当に2週間ほどで整理できたのだろうか(締め切りを考えたら1週間あるかないかとも思う)。
いやいや、雑誌がバンバン売れていた景気のいい時代だ。アルバイトやパートを
大勢集め、人海戦術を取ったのだろうと推測しておこう。
巻頭グラビアは『本塁を死守するもの』の見出しで
巨人の捕手・
藤尾茂が登場。いわゆる「打てるキャッチャー」で、のち外野にコンバートとなった。その後には『元気になった豊田選手』というタイトルで、西鉄・
豊田泰光も特集されている。豊田氏は、のちに小誌の名物コラムを執筆していただくことになる人物だ。
本文巻頭は『監督は待っている!~中盤のカギ握る五人の選手』。言葉のとおり、序盤戦出遅れた選手たちが扱われ、故障に苦しむ西鉄の大ベテラン、
大下弘、審判への暴行事件で「無期出場停止処分」となっていたが、この号の発売前に復帰した東映の
山本八郎らが紹介されている。山本に関しては、無期と言いながら実は44日での復帰だった。随分短いとも思うが、当時はさほど珍しいことではなかったらしく、その点を言及する箇所はない(復帰署名が1万人以上集まったとはあったが)。山本の復帰戦はセンターグラビアでも紹介されており、暴行の相手となった角田審判と握手する写真も掲載されている。
また『パ・セの実力は伯仲』と、この年の7月27、29日に行われるオールスターの展望企画もある。立大の盟友でセ、パに別れた新人、南海・
杉浦忠、巨人・長嶋茂雄の対決が最大の注目だった。若い読者の方は、あまりピンとこないかもしれないが、80年代くらいまでのオールスターは、いまとは比べものにならないくらい人気があり、まさに「夢の球宴」だった。
また、『今週の話題』というコーナーでは、セカンド後方への内野フライで三塁からタッチアップでホームインした新人の話題が『前代未聞の内野犠飛』として載っている。もちろん、この号の表紙にもなった長嶋だ。若手時代の長嶋の魅力の1つにスピードと果敢な判断力があった。
対談コーナーはNHKのアナウンサー、志村正順が西鉄の
三原脩監督にインタビュー。『これが西鉄ライオンズだ!~智将三原監督は告白する』とある。3連覇を狙った年ではあるが、前述の大下らの出遅れもあり、首位南海に差を離されていた。三原監督の言葉も、やや鋭さを欠いているように思えた。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM