
ポストシーズンでは思うような投球ができなかった則本
10月22日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第5戦の試合終了と同時に、
楽天の2017シーズンの戦いが終わった。8月まで首位を走り続けた楽天。追われる立場として長いシーズンを戦うのは初めてだ。その難しさと勝負どころでの未熟さを痛感した。やはり毎年のように優勝争いを繰り広げている
ソフトバンクは一枚も二枚も上手だった。だが16年の5位からのジャンプアップ、そして3位ながらファイナルステージへと駒を進めたことで手応えも感じたはずだ。
一方、エース・
則本昂大も、今季自己最多タイの15勝を挙げ、貯金も8とチームをけん引するが、弱さを露呈してしまう。それがCSだった。ファーストステージ第1戦の
西武戦(メットライフ)では4回7失点と今季ワーストのピッチング。エースとしてマウンドに上がることの重圧は想像以上だった。そして初戦の重要性を分かっているからこそ、結果もそうだが、負け方にも責任を感じた。
「これが(今季)最後の登板になったんとちゃうかな」
試合直後にはそんな絶望感が押し寄せた。だが、楽天はその後2連勝でファーストステージを突破する。そのとき則本は先発した
岸孝之、
美馬学、そしてフル回転した中継ぎ陣に感謝したと同時に、チームの強さも感じていた。
「シュリッターは今年ほとんど打てていなかったと思うんですよね。でも第3戦はそのシュリッターからダメ押し点を取れて(ファーストステージを突破した)。ウチのチームは本当に強いなというか、良いチームだなとそこであらためて感じました」
田中将大(現ヤンキース)がメジャー挑戦してから、エースとしての重圧をひとりで背負ってきた。そんな則本が救われたと感じたポストシーズン。岸、
細川亨ら経験豊富な選手が加入し、優勝を知るメンバーは中堅に。そして
茂木栄五郎、
田中和基ら若手も台頭してきた。チームは確かに進化している。その中で則本は弱さを知り、チームの強さを知った。今季感じた悔しさと喜び。その経験は自信へと変わり、来季の飛躍へとつながっていくだろう。
文=阿部ちはる 写真=高塩隆