2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 恒例の座談会は超豪華版
今回は『1958年8月20日号』。創刊第19号で定価30円。カラーページはない。
今度こそオールスター総決算号だ。頭グラビアから本文、センターグラビア、座談会、後ろグラビアと、ほぼオールスター尽くしだ。
巻頭グラビアは『長嶋対杉浦の一騎打~満天下注目の対決に長嶋打ち勝つ』。平和台での第1戦は、全パ先発が南海・
杉浦忠、全セの一番が巨人・長嶋茂雄。セが先攻だったので、立大卒同期ルーキーである両者の対決から熱戦がスタート(第1打席四球)した。
本文巻頭は『1958年オール・スター熱戦譜』(中黒は星マーク)だ。初戦平和台、2戦目
広島の2試合を舞台裏から密着取材。杉浦×長嶋など夢対決を軸としつつ選手コメント満載で原稿にしている。なお、初対決が四球だった杉浦×長嶋対決は、第2打席長嶋ライト前で杉浦は早々に降板となった。「杉浦は不調でしたよ。あれが彼の力ではない」と長嶋。対して杉浦は「シゲは立派ですよ」と言葉少なかった。
さらにいまもそうだが、球宴中に行われる選手会についてのレポートも掲載されている。まず、「十年選手制度の復活」。同一チームに10年所属した選手にはA級十年制度の資格が与えられ、移籍の1回の自由を持つという制度だが、事実上廃止され、51年までに契約した選手に限られていた。続いて「ポストシーズン問題」。これは12、1月は球団の拘束をなくしてほしいというもの。ほか「野球協約の検討」なども議題に挙がったようだ。
なお、この球宴はセレモニーがなかなか派手で、平和台は市長がヘリコプター(ソニー号)でグラウンドに降り立ち、始球式。広島では地元のバレー団の少女と選手が手をつないで入場する演出だったが、かなりの選手が照れて手をつながなかったらしい。これも時代か。
恒例の座談会は『オールスターから選手権』と題し、南海・
野村克也、西鉄・
稲尾和久、大毎・
榎本喜八、巨人・長嶋茂雄、
阪神・
小山正明、広島・
藤井弘が登場する超豪華版。みなリラックスしてやリ取りし、空気感がたまらない。この中でヤジ将軍として阪神の2年目、
辰市邦輔の話が出てきた。少し抜粋する。
長嶋 セカンドに新しく出てきた人がいるでしょう。
小山 ああ、辰市。あれ若いくせいにカーブを打つのがうまいんだ。
藤井 彼、いい心臓してるね。あれのヤジが一番よく聞こえる。
小山 ちょっと耳が悪くて、耳に綿をつめているから自分にはそんなに聞こえない(笑)。そんなに大きな声を出してると思ってないんじゃないかな。
藤井 うちの金山さん(次郎)が“坊主うるさいぞ”いうてもケロっとしていた。
週べを読んでいると、いまではほとんど情報の残っていない選手の話がポツリポツリあって楽しい。
ちなみに結果は1勝1敗。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM