2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 長嶋が1億四千万で大リーグに!?

表紙は左がカージナルスのスタン・ミュージアル、右が巨人・長嶋茂雄
今回は『1958年11月26日号』。創刊第33号で定価30円。中カラー見開きは来日中のカージナルスのレジェンド、スタン・ミュージアル。本人のサイン入りである。表紙もスタン・ミュージアルと巨人・長嶋茂雄の2ショット。表紙に初めて2人の名前が入っている。おそらくスタン・ミュージアルの顔が分からない読者のためだろう。
巻頭グラビアも日米野球の様子とスタン・ミュージアル、サム・
ジョーンズ、さらに長嶋の連続写真。連続写真は週刊化前からの売りの1つでもあった。
本文巻頭は『チャンピオン西鉄の秘密』。「その選手がはたしてどれだけの力を持っているのか評価するには、グラウンドでの、つまり試合における働きが何よりも大切だ。私生活で評価したりすることは選手に任せておけばいい」という
三原脩監督は「ベースボールは、ボクシングとラグビーにつぐ野性的な競技だ。大衆の魅力もそこにあるのだと思う」と言った後、「円熟してくると野性味が失われてくるものだ」とも付け加えた。果たしてそれは選手をさすのか、采配をさすのか。その後の“騒動”を思えば興味深い言葉ではある。
座談会では『立ち直る巨人の力』と題し、巨人の
広岡達朗、
藤田元司、長嶋茂雄が出席。読んでいくと、日米野球のさなか、新聞で「長嶋が1億四千万で大リーグに」という記事があったらしい。抜粋する。
長嶋 いやあ、あれには参ったですよ。どこかの新聞社の人が新聞を持ってきてくれたんですよ。そしたら僕が1億四千万で売られるなんて、デカデカと書いてあるんですね。びっくりしちゃった。
藤田 長嶋選手の談話もちゃんと出ている(笑)。
長嶋 どんなことを言っているんだろう。その長嶋は(笑)。
藤田 “僕はアメリカに行きたいと思っているけれど”(笑)。
長嶋 (巨人と)契約するときは5000万なんて言われるし、今度はその三倍になっちゃった(笑)。
藤田 そうすると、お前の髪の毛一本いったいいくらになるんだ(笑)。
いまとは物価が違う。トップ選手でも月給30万円ほどが相場だった時代だ。
表紙タイトルにもなっている『哲治よ!御苦労さま』は3ページ。
川上哲治の母・ツマさんの手記だ。野球とは関係ないかもしれないが、次の箇所に目がとまった。ツマさんは川上がトップ選手になってなお、農家の仕事を止めない理由についてだ。
数年前から「お小遣いは送るから百姓はやめて楽にしてください」とよく哲治がいって寄越しましたが、私はその都度断ってきました。哲治が一生懸命野球をやっているのに、親の私が左ウチワで暮らすことはファンの方に申し訳ないと思ったからです。それに人間は働ける間は働き続けなければ。
これぞ、日本の母か。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM