
今季、大きく成長を果たした菊池。その理由の一端が「機械のように投げている」ことだ
スポーツをスポーツ医学、そしてスポーツ科学的な視点から取り上げ、現場で活躍する監督、コーチらの指導テクニックを紹介する雑誌『コーチングクリニック』。弊社の月刊誌だが今季、最多勝、最優秀防御率の2冠に輝いた
西武の
菊池雄星は同誌を時折、購入してくれるのだという。
背番号16の“愛読誌”である編集部から球団へ取材申請をしたら、快く了解をもらい先日、インタビューが行われた。取材のテーマは「ミスを科学する」。12月下旬発売予定の『コーチングクリニック』の特集だが、菊池の口からは興味深い答えが次々と出てきた。
その一つは、「どんなときでも、感情を入れずに機械のように投げるんだと自分に言い聞かせている」こと。そのために、「投げている自分を俯瞰で見ることを心掛けている」という。
「菊池雄星というピッチャーが投げているのを僕自身が後方から見ていて、『フォームが崩れてきたから、もう少し意識するといいぞ』などと、自分を第三者的な目線から操れている状態が僕にとってのベスト。これは、ミスをしたときの気持ちの切り替えの面でも大切ですし、ミスを未然に防ぐことにもつながると思います」
同様のことは以前、チームの先輩である
牧田和久も話していた。
「1年目のキャンプ中からブルペンや実戦で投げていても、もう1人の自分が上からそれを見ている感覚があったんです。それで『球離れが早かった』『体重が少し前に行っている』という細かい部分が分かり、コーチやキャッチャーにも聞いて、自分の感覚とすり合わせて。そういった作業を通して、修正できていた部分が良かったのかなと思います」
きっと超一流選手に共通する能力なのだろう。菊池は自身を俯瞰して見るテクニックを得るために、日ごろから意識していることもあるという。
「普段の生活を常にシンプルに過ごすことを心掛けています。オーバーワークで疲れたり、情報があふれ過ぎてしまったりすると、ノイズが多くなって自分自身を客観視することができなくなってしまうので、生活に無駄な情報を入れないようにして、心がフラットな状態を保てるようにしています」
そういえばインタビューなどをしていても、菊池には以前よりも落ち着きが出てきたように感じる。心身ともにレベルアップを果たしている菊池。来シーズンも期待できそうだ。
文=小林光男 写真=BBM