
2017年夏までの甲子園大会は延長15回で決着がつかない場合は引き分け再試合となっていたが、18年春のセンバツから導入されるタイブレークによって野球が変わる
2018年のアマチュア野球は「タイブレーク」がキーワードとなる。すでに、大学、社会人では採用されてきたが、その方式が変わる。大学は延長10回から一死満塁の選択打順だったのが、国際大会に準じて、無死一、二塁の継続打順に変更。社会人も大学と同様の状況から再開されるが、適用するイニングは大会ごとの規約により合わせて行うという。
そして、高校野球でも春のセンバツからついに、タイブレークが導入される。詳細は1月に明らかとなるが、春は90回、夏は100回という節目の記念大会で甲子園は大きく変わる。
新たな特別ルール採用に至っては、賛否両論があった模様だ。選手の健康管理が最大の目的であるが、特に夏に関しては、3年生にとって特別な大会。人為的な早期決着を求めるのではなく、「最後までやらせてあげたい」という意見があったのも事実だ。
1969年夏、松山商と三沢による決勝再試合、1979年夏、箕島対星稜の延長18回、1998年夏、横浜対PL学園の延長17回、2006年夏、早実と駒大苫小牧による決勝再試合……。
昭和、平成と語り継がれてきた延長をめぐる「伝説の名勝負」がなくなるのでは? という声もある。ただ、そういった違和感を覚えるのは、導入当初だけのような気がする。決まった以上、現場は大会規定に従って、対応していくしかない。
過去の歴史を振り返れば、木製から金属バットの導入でパワー野球、打高投低に転じたと言われる。ベンチ入り人数も14人から15人、16人、18人と変移。また、用具に関しても高校野球では禁じられていた打撃用手袋、レッグ、エルボーガードの使用など、“柔軟性”が出てきた。タイブレークに関しても、2017年夏までの延長15回引き分け再試合を回避し、限られた日程(春休み、夏休み)で試合を消化したい大会運営上の問題もある。また、各国際大会、カテゴリーで採用されている背景もあり、時代の流れに沿った形と言える。
タイブレークは先に攻撃が仕掛けられる、表のチームが有利との声もある。一方で、表が無得点だった場合は一転として、裏の攻撃がサヨナラの最大のチャンスを迎える。いずれにしても両校とも、平等の状況から競われる。
今度はタイブレークも想定した最善の準備をし、球児は一つの勝利に向かって、ひたむきにプレーする。現場、ファンも含め、時間とともにタイブレークも含めた甲子園、として受け入れられる日がくると思う。
これまでの試合展開とは異なる、タイブレークをめぐる激しい攻防。今春の甲子園に足を運ぶ高校野球ファンは、新たな名勝負の目撃者になるかもしれない。
文=岡本朋祐 写真=BBM