2018年に創刊60周年を迎える『週刊ベースボール』。おかげ様で、すでに通算3400号を超えている。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『タイガース魔の1カ月〜毎シーズン苦しめられる長期遠征』
今回は『1959年9月2日号』。定価は30円だ。この号は全体に首位南海を猛追する大毎の記事が多く、センターグラビアが『笑う大毎オリオンズ』。さらに本文巻頭も『特集 波乱呼ぶ大毎攻勢の内幕』である。前号『特集
巨人の混乱狙う大毎のゲリラ戦法』の続編ともいえる内容だ。前号は、かなりのスクープ記事だったようで、それを読んだチーム内でも混乱が生じ、
別当薫監督は「平地に波乱を起こすようなことはしないでもらいたい」と抗議したようだ。
阪神・
小山正明、
三宅秀史、また、国鉄・
金田正一とのトレード話が挙がっていた山内和弘が、この件について取材を受けている個所がある。当時は主力同士の交換トレードは皆無に近かった。
──トレードに出されるといううわさを知っていますか。
「だいぶ前から知っている」
──その話を聞いた心境は。
「別にこれといってない。アメリカでは毎年毎年ざらにあることだし、そのことで気分を害したりするのは間違っている。会社同士の取り決めで、ぼくらは将棋の駒のようなものだから、それに対して、なんと言ってもしかたのないことだろう」
──もし、ほかのチームにトレードが決まったら。
「ぼくらは将棋の駒だから、それに従うほかないでしょう。ただ、ぼくはまだまだ、もう二、三年の間は、オリオンズとぼくは離れてはまずいんじゃないかと思うんです。オリオンズで生まれ、オリオンズで育ったぼくであり、このところ体は絶好調。バットを振るのが楽しくてしようがないときです。はっきりいって、ぼくを放すのは、オリオンズの損じゃないかというのは、そのことなんです」
『世紀の大トレード』は63年オフ、妙に予言的ではある。
のち「死のロード」と言われる夏の甲子園時の長期遠征に触れた記事もある。
『タイガース魔の1カ月〜毎シーズン苦しめられる長期遠征』だ。これによると3、4年前から、この長期遠征で調子を落とすケースが始まったらしい。
この年は約20日間だった。エースの小山正明はこう憤る。
「在京チームは変則ダブルのおかげで旅行日はうんと少なくなり、随分楽をしているのに、なぜわれわれだけ、こんなひどい目にあわねばならないんだろう。不公平もはなはだしい」
こういう言葉が球団フロントに嫌われ、移籍要員に名前が挙がっていたのかもしれない。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM