
亜大・山城大智は沖縄尚学高時代に「琉球のライアン」として騒がれた。2018年は学生ラストイヤーを迎える
沖縄尚学高時代は2年夏から3年夏まで3季連続で甲子園に出場し、通算5勝をマークした。侍ジャパンU-18代表では日の丸を背負い、アジア選手権(タイ)に出場。高校球界を代表する投手としてドラフト候補にも挙がった。左足を高々と上げるダイナミックな投球フォーム。最速147キロ右腕は「琉球のライアン」と呼ばれた。
高校卒業後は亜大に進学し2018年、最終学年を迎える山城大智は練習始動日となった1月7日、この3年間を回顧した。
「大学1年までは、高校時代の実績にしがみついていた。でも、今はまったくない。一から取り組んできたことをラストシーズン、成果として残したいと思う」
亜大入学直後、大きな壁にぶち当たった。「即戦力」としてオープン戦に起用されたものの、投げるたびに打ち込まれたという。
「高校時代は勢いで行っていた。高めのボール球でも、振ってくれる。でも、大学生は甘いボールはスタンドまで持っていかれる」
際どいコースも見極められ、結果的に制球を乱した。
「このままでは使えない」
周囲からの言葉で、フォーム修正を決意。「琉球のライアン」からの決別だった。
「捨てたわけではありません。とにかく試合に投げたい、その一心でした」
2年時は一度、元に戻したこともあったが、「グチャグチャになった」と、やはり、コントロールが乱れた。2年秋まで4シーズンで、リーグ戦登板4試合と戦力になれなかった。
「2年生の時点で『ライアン』はきっぱり、あきらめた。あのフォームだと時間がかかる。スピードではなくて、ボールのキレ、低めへの制球を意識した形を探し求めました」
無走者でもセットポジションで、コンパクトな腕の振りを意識した新フォームが固まったのは3年時。春のリーグ戦でリーグ戦初勝利(救援)を挙げると、秋は初先発した日大2回戦を、6回1失点で通算2勝目を挙げた。年間9試合の登板で、飛躍のきっかけをつかんだ。
最速は143キロと高校時代から4キロ落ちたが、課題だったゲームメーク能力が上がり、今春は「先発として投げたい」とシーズンを通して貢献したい思いが強い。変化球はカーブ、ツーシーム、スライダーに加え、投球の幅を広げるため、春までに新たな球種を2つほど試しているという。
昨夏、亜大・生田勉監督から「実績は気にせず、どんどん先頭に立って引っ張っていけ!」と、3年生ながら投手陣のリーダーに指名された。真摯に練習に向き合う姿勢が認められ、新チームでは副主将(投手責任者)を任されている。
「チームとしては3季連続で優勝を逃している。この春はリーグ制覇して、日本一を目指せるようなチームにしたい」
バッテリーを組む捕手で主将の
頓宮裕真(4年・岡山理大付高)は確かな手応えを口にする。
「山城は球速を捨てて、打たせて取る投球を心掛け、考えながら投げている。ここぞの場面では勝手にスイッチが入る」と、高校時代に甲子園で磨かれた勝負勘は、今でも大きな武器だ。大学卒業後は社会人野球でのプレー続行を希望している。
「琉球のライアン」から進化した「亜細亜の山城」の神宮での投球に注目が集まる。
文=岡本朋祐 写真=BBM