
17年は正捕手としてリーグ連覇に貢献した會澤
2017年、セ・リーグの捕手部門で自身初のベストナインに輝いた
広島・
會澤翼。「目指していたタイトルなのでうれしい」。素直に喜んだが、すぐに「僕一人の力だけで獲れたわけではなく、監督やコーチ、チームメート、裏方さんに感謝したい」と周囲への感謝を口にしたのが印象的だった。
15年、それまでの自己最多となる93試合に出場し、定位置奪取を期待されたが、16年はベテランの
石原慶幸が熟練の技術を発揮し、第二捕手に。しかし17年は
野村祐輔や
岡田明丈ともバッテリーを組むようになり、15勝を挙げた
薮田和樹のブレークにも貢献。自己ベストとなる106試合に出場し、正捕手として37年ぶりのリーグ連覇を導いた。
シーズン中には2度のサヨナラ打を放つなど印象的な活躍もあったが、基本的には八番で、地道につなぎ役に徹した。
「いかに下位打線を抑えるかはどこのチームでもキーになってくる。反対にこちらが攻める側だと、点を取れるところはしっかり取っていかないと。僕は打率はそこまで気にしていなくて、それよりもここぞというところで点を拳げられるバッターになりたい。それが内野ゴロでもいい。相手バッテリーが一番したいことをさせない、ということは意識している」
打席でも捕手の頭脳をフル活用。強力打線の中のアクセントとして堅実な働きを見せた。
17年は後半戦だけで7死球を浴びたが、「痛みに強くないとキャッチャーは務まらない」と弱音を吐くことはない。元ブルペンコーチで、現在は大野寮の寮長を務める
道原裕幸氏は、「キャッチャーは、守っていると防具のないところにボールが当たることがある。もちろん痛いけど、石原と會澤は痛がらなかった、キャッチャーは切り替えができないとダメ」と、若手のときから捕手としての素質を評価していた。高卒11年目にして勝ち取った栄光の裏には、黙々と積み重ねてきた研さんの日々がある。
18年からは新選手会長に就任した會澤。責任感を増した縁の下の力持ちの活躍に注目だ。
文=吉見淳司 写真=BBM