今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。おかげ様で、まもなく通算3500号を迎える。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『三原脩と千葉茂の計算~最下位チームを率いる風雲児の胸中は』
今回は『1960年3月30日号』。定価は30円だ。グラビアは
巨人、西鉄、南海、
中日ら注目チームのオープン戦風景。西鉄のベンチで、
稲尾和久がふざけて
中西太の首を絞め、それをあきれたように見守る
豊田泰光の3ショット『三人の球豪』が見開きで掲載されていた。3人の関係が伝わってくる。
本文巻頭は『南海・巨人は優勝できるか?』。前年王者2チームの特集ではなく、野球評論家の
苅田久徳、
大島信雄、
佐々木信也、岡田実の座談会形式(実際にはしていない)のシーズン予想で構成されたものだ。
順位予想は4氏とも、パが南海、セが巨人。対抗馬はパが大毎、セは中日を挙げていた。
三原脩が監督に就任した大洋はほぼ5、6位。苅田は4位だが、これは4~6位を国鉄、
広島、大洋で争うだろうという曖昧なもの。周囲の期待はその程度だったのだろう。
『三原脩と
千葉茂の計算~最下位チームを率いる風雲児の胸中は』という記事もあり(千葉は近鉄監督)、その中で三原も「私はあまり技巧を使いたくない。最下位を脱出しようと思えば、いくらでも方法はあるに違いないが、私の目標には、むしろ邪魔になるだけだろう。将来大器となる者には、せせっこましいことは要求せず、ひとつ大きく育つよう、オーソドックスな野球を身につけさせたいと思う」と優勝に対しては、あまり自信たっぷりとはいかない。
ただ、この記事中、さすが三原と思った言葉が2つある。
「運を自らのほうに導き寄せるだけの闘志とそして技術から生まれる自信。これだけでいいんだ。いいプレーだけが君たちの命なんだ」
「人に差したり差されたりするな。飲みたいものは自分でついで勝手に飲め」
2つめは酒を飲まない人には分かりづらいかもしれない。人のコップが空いているからつぐとか、つがれたから飲むではなく、自分の意思で飲めという意味だ。意外と深いなと思ったが、いかがだろう。
『スター登場』には2年目を迎える
阪神・
村山実が登場。50の質問に答えてもらうものだが、ほとんどあっさり答えている中、「わるく書かれた記事も平気ですか」の質問には、少しエキサイトしたようだ。
わるくというより、いい加減なことを書かれたのには腹が立ちます。たとえば、昨年「あんなフォームで投げられるか」ということが書いてあったのが目につきましたが、あれには随分、しゃくにさわった。
ちょっとピッチング練習を見ただけの人がはっきりと確かめもしないでいい加減なことを言うな、と思った。知らないファンの多くの人はほんとうにするじゃないかと。
その人その人の特性、特技があるのだから、それを生かすように書いてほしいと思いますね。その代わり、本当に悪い点の批評に対しては、もっともだと思います。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM