
侍ジャパン・稲葉監督(左)の期待に応えようと意気込むソフトバンク・柳田
「頑張ります」
この一言で、十分だった。
侍ジャパン・
稲葉篤紀監督はNPB各球団のキャンプ視察を行っている。オーストラリアとの強化試合(3月3日=ナゴヤドーム、4日=京セラドーム大阪)が控えており、候補選手の動きを最終チェックすることが目的だ。
1月23日、東京都内で記者会見が行われ、すでにコーチ陣5人と代表選手が一部発表されている。6選手のうちの一人が、
柳田悠岐だ(残り22人の発表は2月中旬予定)。
視察初日となった2月2日、12球団トップを切って向かったのはソフトバンク。指揮官が最初に固い握手を交わしたのが柳田で、冒頭の意気込みが伝えられた。短いやり取りではあったが、握手の力強さ、鋭い視線から、稲葉監督は相当の思いを感じ取ったはずだ。
「小久保ジャパン」でも、主軸となるはずだった。2014年の日米野球で侍ジャパンに初選出されると、攻守走に躍動してMVPを獲得した。翌15年3月の強化試合にも招集。ソフトバンクの先輩でもある
小久保裕紀前監督の信頼を得て、トップチームにおける絶対的な立場を確立した。
だが、同年11月のプレミア12を故障のため辞退すると、16年の強化試合(対メキシコ、オランダ)も故障のため辞退。そして、故障個所の回復が思わしくなく、昨年のWBC選出も見送られた。WBCは2大会連続で準決勝敗退。
無念――。
柳田の心中は、この一言に凝縮されるに違いない。そして、迎えた3年ぶりの代表復帰。攻守走の3拍子でアグレッシブな柳田のスタイルは、日本野球の象徴と言っていい。
「頑張ります」
引き締まった表情は、自信に満ちあふれている。
これまでの思いをすべて、プレーにぶつける。強化試合とはいえ、2年後のオリンピックへ向けて、存在感をアピールするには絶好の機会。再び、世界を驚かせる柳田のパフォーマンスを最も注目している。
文=岡本朋祐 写真=湯浅芳昭