“足”を生かすために。確かな意識を持ってバットを振る小田裕也

両手を離してバットを握る。ヘッドを立てる感覚を養うため、今キャンプでは1スイングもムダにはしない
12球団最少のシーズン33盗塁に終わった昨季。掲げるスキのない野球へ、機動力アップは欠かせない中で、足を生かすために打力向上を期しているのが、今季プロ4年目を迎える
小田裕也だ。
「西野(真弘)、安達(了一)、(後藤)駿太、それから小田(裕也)。足が使える選手はいる」
福良淳一監督を支える西村文徳ヘッドコーチは、小田の名前を最後に挙げ、強調して名を発した。その期待は練習からも見て取れ、フリー打撃では熱心に指導。両手を離してして打たせるなど、打力向上へ助言を送っていた。
「自分はヘッドが寝ちゃう傾向が強くて。だから、手を離して(ヘッド)立つ感覚を意識付けていたんです。武器はやっぱり足。だから塁に出るには、低い打球を打つことが大事。最低でもライナーで。キャンプでは、その意識で打っています」と語るように、小田自身の意識の高さは、ロングティーでも垣間見えた。打球飛距離は度外視し、同メニューでも低い打球を連発。ノーステップで打つなど、力強いスイングを身につけるべく、下半身主導で振り込んでいた。
打撃フォームも、「目線がブレることを防ぐため」と、すり足気味に変更。これも出塁を最優先に考えた答えで、今季から8年ぶりに打撃コーチに復帰した
藤井康雄コーチに助言を受けたという。
試行錯誤を繰り返す背番号50。キャンプのテーマは「走攻守、すべての面でレベルアップ」だが、念頭には最大の武器である“足”をどう生かすかを置いている。2月15日に行われた紅白戦では、2度、盗塁を試み、ともに失敗に終わったが、試合出場中にも関わらず、特別代走で起用されるなど、足に対する期待の大きさを感じさせる。
長距離砲が並ぶ打線にあって、俊足巧打の台頭は、戦い方に大きな幅を生む。新人の
福田周平ら、年々、同タイプのライバルは増える中で誰が最初にスキのない野球の体現者となるのか――。チームに欠かせぬ存在へ。小田は鍛錬を積み続ける。
文・写真=鶴田成秀