今季、抑え候補として
ロッテに加わったのがタナー・シェッパーズだ。2013年にはメジャーで76試合27ホールド、防御率1.88をマークした193センチの長身右腕だ。近年は故障もあって調子を崩していたが、それでもカーブで緩急をつけながら平均150キロを超えるツーシーム気味のストレートで押し込むピッチングは迫力十分だ。
クローザーを任されるのであれば空振りが奪えるタテの変化球が欲しいところだが、持ち球であるチェンジアップにはシェッパーズ自身も信頼が置けていない様子。しかし、春季キャンプでバッティング投手として初めて打者を相手にした2月16日、シェッパーズはこれまで持ち球にはなかったスプリットを投じていた。
「スプリットを打者相手に投げたのは初めてだったけど、思ったとおりにいい感じで投げられたよ。今日は10球くらい投げた。ブルペンコーチに教えてもらったんだ」
そのブルペンコーチというのが投手コーチとして9年ぶりにチームへ復帰したかつてのエース、
清水直行コーチだ。自身もプロでキャリアを積み重ねていく中でスプリットを習得し、投球の幅を広げた。
「チェンジアップがいまいちだというので、スプリットの握りを教えたんです。握って違和感がないというので、じゃあ取り組もうか、と。一番大事なのは抜けないという安心感があること。そこは大丈夫みたいなので」
清水直コーチの現役時代のスプリットはシンカーのように沈むツーシーム系のボールだったが、シェッパーズがこれからスプリットをどう進化させていくのかは本人次第だという。「奥行きを使って沈むツーシーム系のイメージでゴロを取りたいのか。空振りが欲しいなら深く握ってフォークにする。彼のサイズなら可能だと思います」。
シェッパーズ自身が「これからスピードも上がっていくと思う」と言うように、実戦の中でさらに腕が振れるようになってきたときにスプリットがどんな変化をするのか。打者がそれをどう感じるのか。そしてシェッパーズがどんな投球の組み立てをイメージし、どんな球種を求めていくのか。
カモメの新クローザー候補が、清水直コーチ直伝の新球でどんな進化を遂げていくのか。注目していきたい。
文=杉浦多夢 写真=高塩 隆