今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 『巨人軍マネジャーの十年〜裏から見た金と力のプロ野球』
今回は『1961年1月25日新春号』。定価は30円だ。巻頭グラビアは、60年の新人王である巨人・
堀本律雄の自主トレ風景。トレーナーと組んでやっていたが、そのトレーナーは、なぜか和服だった。
本文巻頭は『1961年プロ野球大穴はこれだ!』。「藤田の肩と二塁手の穴」「三原のおそれる選手の油断」「水原、宇野でパの優勝を!」「徳武は長嶋になるか木次になるか」の4章からなっている。最後の「徳武」は早大のスラッガー、
徳武定之。大争奪戦の末、国鉄に3000万円とも言われる破格の契約金で入団した。長嶋は立大から巨人に入団し、1年目から活躍した巨人・
長嶋茂雄、木次は59年早大から鳴り物入りで巨人に入団しながら伸び悩んだ
木次文夫だ。徳武はゴツイ風貌もあり、早慶6連戦では、慶大応援団から「ゴジラ、ゴジラ」とヤジられていたらしい。いまなら褒め言葉かもしれない。
『共同戦線をはる映画界の二巨頭〜永田、大川のプロ野球革命プラン』という記事は、大毎・永田雅一オーナー、東映・大川博オーナーの発言が過激さを増しているという内容。セから東映は前巨人監督・
水原茂監督を招き、大毎は前国鉄監督・
宇野光雄を新監督とした。当時セとパには、はっきりした境界線があり、人もまた財産という意識が強かった。その中で2人は人気で後れを取るパの活性化のため、思い切った動きを見せ始めた。
また駒沢球場が東京オリンピックのため使用できなくなるため、懸案となっている東映の新球場についても両社の協力で建設したい、また二軍制度の改革のため、イースタン・リーグを復活させるなどと発言。新球場について大川オーナーは「大東映がつくる以上、後楽園のようなチャチなものはつくりたくない」とも。鼻息が荒い。
『12球団週間報告』の巨人では、年末年始、実家の中華料理店『五十番』があまりにも忙しかったので、
王貞治が手伝いをしたという話。「これまで写真を撮るためにマネしたことはあるが、本物をやったのは初めて」らしい。
「けっこうおもしろかったですよ。手が足りないからいつも出前が遅れがちなんです。だから店の人が持っていくと、おそいぞ、なんて文句が出るらしいんですけど、ぼくが持って行ったらなにも言われませんでしたよ」
そりゃ、そうだ。まだ完全開花前とは言え、巨人の王が玄関先で「毎度!」なんて言ったらびっくりする。
巨人のマネジャーを辞めた市川岸郎の『巨人軍マネジャーの十年〜裏から見た金と力のプロ野球』もなかなか面白い。遠征の際の旅館の手配の苦労話、部屋割りをめぐって
青田昇とケンカになった話、
中日戦で客が荒れ、駅まで囚人護送車で運んでもらった話などがある。
以下、宣伝。
週べ60年記念シリーズ『巨人編』が好調発売中。次回、
日本ハム編も佳境です。今回は巨人編に比べ、ややくだけた企画もあります。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM