第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。 名門校の主砲らしい風格
東海大相模高・森下は聖光学院高との2回戦で三番・中堅で出場し、2安打を放ち初戦突破に貢献した。写真は4回裏の甲子園初安打だが、特別な感情はない。そこに森下の芯の強さがある
高校通算46本塁打。NPBスカウトが注目する東海大相模高・
森下翔太(3年)の理想の選手像は
ソフトバンク・
内川聖一だ。
「周囲からはホームランバッターと言われますが、ヒットの延長線上にあると思っています。打点、率が残せる選手になりたい。打撃が分からなくなったときに、内川さんの動画を見ています。逆方向の打球、追い込まれてからの粘りを参考にしています」
冬場は下半身強化に努め、スクワットも1回1回、フォームを意識して取り組んだ。また、変化球への対応も課題だったため、打撃練習からタイミングを追求。「速球、緩いボールでも合わせれば、対応できる」。3月の練習試合解禁以降、2本塁打を積み上げた。打球の質が明らかに変わった実感がある。
「放物線ではなく、2本とも左中間へのライナー性。打ち損じだとしても、外野の間を抜ける。2ストライクに追い込まれても、(スイングが)小さくなることなく、基本的にはセンター返し」と手応えを感じている。
センバツ初戦は大会第5日目の第1試合。対戦相手の聖光学院高は1回戦を勝ち上がってきた。
「1試合、経験している。不利な状況からスタートするが、気持ちでカバーして、普通のグラウンドだと思って、甲子園でもアグレッシブに戦っていきたい」
東海大相模高は「アグレッシブ・ベースボール」がモットー。その言葉のとおり、立ち上がりに1点を先制されたが、直後の1回裏に打者一巡で一挙6得点。抜群の集中力を発揮すると、その後も攻撃の手を緩めず、12対2で3回戦進出。前回出場の2011年は2度目の優勝を遂げており、春頂点へ好発進した。
三番・森下は第2打席で一邪飛に倒れると、力が入っていると見た門馬敬治監督から「コンパクトに振り抜け!」と指示を受けた。第3打席で左前打、第4打席で中前打と修正能力の高さを披露。シングルヒットでも「投手にボールがかえるまで目を離さない」と、二塁を果敢に狙う姿勢は相手野手にも重圧を与えた。
「守備でも攻める。どこにいても、相手にプレッシャーを与える。先手、先手で攻める。相模のアグレッシブ・ベースボールができたのは良かった」
甲子園初安打にも特別な感情はない。以下のコメントが、森下の強さである。
「気持ちは熱く、頭は冷静に。相模のグラウンドから甲子園を意識している。相模での練習試合でのヒットと変わらない。チームのためにつなげられた」
どこが相手でも、スタイルは変わらない。伝統のタテジマ、そして相模ブルーが今春も、聖地で映えている。「自分たちは歴代の先輩方の悔しさも背負っている。甲子園で暴れていきたい」と、名門校の主砲らしい風格が漂っていた。
文=岡本朋祐 写真=石井愛子