第90回記念選抜高校野球大会が3月23日、阪神甲子園球場で開幕した。球児による13日間(準々決勝翌日の休養日1日を含む)の熱戦が繰り広げられるが、現場でしか分からない「センバツリポート」をお届けしていく。 総合的なトップ評価は大阪桐蔭高・藤原、根尾

大阪桐蔭高・藤原
第7日目の第2試合が終わり、出場全36校が初戦を終えた。16強が出そろい、第3試合から3回戦が始まり、大会も中盤から大詰めを迎えていく。
ネット裏に陣取る12球団のNPBスカウトは全国からメンバーが集結し、この1、2回戦(今春は20試合)を視察するのが慣例となっている。
複数球団のスカウト幹部から聞いた取材を下に、2018年春、プロが評価したセンバツ出場選手の主なドラフト候補をピックアップしていきたい。
総合的な「トップ評価」は大阪桐蔭高・
藤原恭大外野手と
根尾昂遊撃手だ。ともに3度目の甲子園で藤原は攻守走の3拍子、根尾は左打席からの鋭いスイングを披露。ある在阪チームのスカウトは、藤原について「高校生の外野手を1位でいくのはどうか……というところであるが、チームの補強ポイントに合致すれば、ないことではない」と、最上位で指名するランクの選手であることを認めた。
根尾を含め、強打の遊撃手が目立った。特に評価急上昇なのが明秀日立高・
増田陸。リストの強い打撃で、守備でも球際の強さでインパクトを残した。このほか日大三高・
日置航、延岡学園高・
小幡竜平がセンスの良さを見せた。
投手で強い印象を与えた明徳義塾高・市川

明徳義塾高・市川
投手では明徳義塾高の右腕・
市川悠太の印象が強かったようだ。サイド気味の腕の位置からキレのあるボールを投げ、特にスライダーはベテランスカウトが「ブレーキがかかって浮き上がる。初めての対戦だと面食らうだろう」と絶賛。昨秋の公式戦全10試合を一人で投げたように、主戦としての責任感とスタミナも十分で、先発だけでなく、鉄腕リリーバーとしての適性があるかもしれない。
また、大阪桐蔭高の右腕・
柿木蓮は昨年11月の明治神宮大会では本来の力が出し切れなかったが、一冬を越えて成長。前出のベテランスカウトは「力任せだったが、フォームが良くなり、ボール自体もキレ、質とともに上がっている」と、復調にホッと一安心した様子だった。柿木の同僚の左腕・
横川凱も好素材。また、粗削りながらも、松山聖陵高の191センチ右腕・
土居豪人の「将来性」を買う球団も多かった。
左腕では彦根東高・
増居翔太に対し、超ベテランスカウトが「サウスポーでNo.1」と言い切った。本人は「京大志望」を明かしており、受験勉強へ真剣に向き合う可能性もあり、ドラフト対象選手から外れるかもしれない。
投打の二刀流では中央学院高・
大谷拓海、明秀日立高・
細川拓哉がともに前評判どおりのパフォーマンスを見せたが、2人ともパワフルなスイングを見せる、打者としての可能性を見いだしている球団もあった。このほか内野手で智弁和歌山高・
林晃汰三塁手、近江高・
北村恵吾三塁手がクローズアップ。外野手では東海大相模高・
森下翔太が攻守に高いポテンシャルを見せており、プロの視線をクギづけにしていた。
もちろん、このセンバツで「最終評価」が下すのは時期尚早。ある在京スカウトは「視察した1試合だけで評価が上がったり、下がったりすることはない。今大会はどんな選手であるかの確認。ピークの夏に向けて、どんどん変わっていきますから、今後も引き続き、視察を続けていきます」
今年の全体的な傾向としては大学生、社会人で好投手が多く、高校生は可能性の高い野手という流れとなっているという。4月に入れば、アマチュア野球シーズンはさらに本格化。2018年のスカウティングは始まったばかりだ。
文=岡本朋祐 写真=BBM