
新入団会見時に語った「開幕一軍」はならなかったが、4月22日の今日、アンダースロー右腕・高橋礼がデビュー登板を迎える
故障者続出の鷹の救世主となれるか。4月19日、
倉野信次投手統括コーチは右ヒジの張りから22日の
日本ハム戦(札幌ドーム)で復帰予定だった
千賀滉大の登板回避を明らかにした。「フォームもズレている部分があるし、もう1週かけて万全にした状態で行きたい」。長いシーズンを考えての決断。では、代わりは誰になるのか。さまざまな憶測の中、白羽の矢が立ったのは、専大から入団したドラフト2位ルーキー・高橋礼だった。
高橋礼の最大の特長は、188センチの長身から上半身を大きく沈み込ませ投げ込むアンダースロー。ボールは地面スレスレから浮かび上がり、最速は141キロを記録する。あまりにも下から投げ込まれるため、初の一軍登板となったオープン戦、3月15日の
巨人戦(ヤフオクドーム)では、右手をマウンドにぶつけ暴投するというアクシデントもあった。また、カーブ、スライダー、シンカー、
シュートと多彩な変化球も操り、打者を翻ろうする。
柔らかな物腰も魅力だ。高橋礼について、専大野球部の齋藤正直監督が「性格的に優しい」と教えてくれたのだが、たしかに、インタビューでも受け答えの口調がゆっくりで優しい。笑顔も良く似合う。しかし、笑顔の中にも芯の強さを感じさせたのが、アンダースローの魅力について尋ねたときだった。「バッターとの駆け引きが面白いんです。オーバースローだったらそこは振ってくれないだろうという高さでも、アンダースローのしっかり指にかかったときのボールはバッターが手を出してくれる」と目を輝かせ語気を強めた。
そして、高橋礼には野望がある。
「球界で数少ない、絶滅危惧種なんて言われたりもしますが、そういうのをなくしていきたい。これからアンダースローをやっていく子どもたちに希望を与えられるような選手になりたい」
球団でルーキーの初登板初先発は、2013年4月11日の
オリックス戦(ヤフオクドーム)の
東浜巨以来。「初登板で初先発は避けたかったけれども……」(倉野投手統括コーチ)と首脳陣にとっては苦渋の選択だったようだが、「いつでも準備はできている。早く投げたい」と昇格後、初登板を心待ちにしていた高橋礼の鼻息は荒い。チームを救うため、アンダースローの未来のため、北の大地で大型サブマリンがベールを脱ぐ。
文=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭