
二番で躍動する大田。日本ハム躍進の大きな原動力になっている
これまでの野球人生で本人も「一度も経験がない」という未知の打順で、日本ハム・
大田泰示の才能がいま本格開花のときを迎えようとしている。
4月24日の
オリックス戦(札幌ドーム)から任されている打順は「二番」。その予想もしなかったポジションで大田が水を得た魚のように躍動中だ。
中でも圧巻だったのは28日の
ロッテ戦(ZOZOマリン)。初回一死から唐川のカットボールを一閃。打球は左翼スタンドに吸い込まれた。さらに1対2と逆転された直後の3回一死一塁の場面でも、低めのカーブを同じく左翼に運ぶ圧巻の2打席連続アーチ。これで直近7試合で5発、チームトップタイの6本塁打と量産している。
大田本人も「打順どうこうじゃなく、自分らしいバッティングができるようになってきている。(長打が打てる)自分の良さを消さないようにやっていきたい」と手応えを口にした。
今シーズンの日本ハムの二番はここまで大田を含めて8人が担ってきた。開幕は入団3年目の
横尾俊建が抜擢されたが、結果を残せず、その後は
西川遥輝、
近藤健介、アルシアとさまざまなタイプのバッターが日替わりでラインアップに並んだ。
栗山英樹監督は「打順の概念を変える」と繰り返し、大田の二番起用についても「選手の持つ自分らしさ、特長を借りて勝とうということ。(大田にとっても二番は)全然違う発想が生まれるかもしれない」と、さらなる覚醒への起爆剤にもなると期待を寄せている。
かつて日本ハムでは
小笠原道大が「バントをしない二番」として一世を風靡したが、「二番・大田泰示」が日本球界に新たな二番の形を提示し、打順の概念を変える存在になるかもしれない。そんな期待感がいまこの男から漂い始めている。
文=松井進作 写真=井田新輔