長いプロ野球の歴史の中で、数えきれない伝説が紡がれた。その一つひとつが、野球という国民的スポーツの面白さを倍増させたのは間違いない。野球ファンを“仰天”させた伝説。その数々を紹介していこう。 グラウンドはぬかるんだ田んぼ状態で……

ヤンキースのベーブ・ルース
1934年、第2回日米野球での話だ。
11月16日、小倉球場の試合は朝から雨が降り注ぎ、グラウンドはぬかるんだ田んぼ状態。普通なら試合など、とてもできない。
それでも全米チームをひと目見ようと、
大勢のファンが集まっていた。関係者が試合をするかしないかを全米のコニー・マック監督に尋ねると、「もちろん、お客さんが待っている以上、試合をするよ」とニコリ。全米チームの先頭を切ってグラウンドに現れたのがベーブ・ルース(ヤンキース)だった。
ただ、なんと傘をさしている。プレーボールがかかったら脇に置くのかと思ったが、そのまま。ルースはこれでも無失策でホームランも打っているのだから、やっぱりすごい。
ほかの選手は傘こそささなかったが、ゲーリッグ(ヤンキース)はスパイクを脱ぎ、観客の一人から長靴を借りると、それを履いて試合に出た。
誰ひとり、豪雨の中で嫌そうな顔をする選手がいなかったというから、さすがプロだ。
写真=Getty Images