これは週べ編集部の逡巡と決断をつづった超不定期連載である。たぶんに言い訳がましい内容が含まれているので興味ない方は読み飛ばしてください。 迷ったが、まずは大谷で行こう!

まさにメジャーの水があった大谷
来週発売号は、交流戦の真っ只中である。
今回は
中日・
松坂大輔を軸とした特集を準備していたが、先週の会議で担当者から「取材スケジュールの都合もあって次々週作業でお願いします」となっていた。
時期的には、やはり交流戦に絡めた特集がいいと思ったが、その時点では、まだ始まってもおらず、テーマを絞り切れなかった。
本誌の最終締め切り(全頁ではなく、およそ半分。ほかは金曜夕方で校了し、すぐ印刷に入る)は、天気次第だが6試合消化の月曜の6月4日早朝だ。日曜のゲームの結果が出るまで、何も決めずに待つわけにはいかない。ただ、分母が6と少ない分、1日ごとに変わる要素は大きい。決め打ちページも必要だ。
発想を変え、巻頭カラーページはエンゼルス・
大谷翔平特集とした。次から次へとこちらの想像を超えるので、だんだんマヒしてきたが、この男のやっていることは本当にすさまじい。かねてから「6月は大谷の月」と勝手に思っていたこともある。
衝撃度と日本での騒ぎっぷりは、まずは95年のドジャース・
野茂英雄、次が2001年のマリナーズ・
イチロー。2人のほうがはるかにすごかったが、彼らは、いわばパイオニアである(マッシーさんのことを忘れたわけではないが)。
さらに野茂のときは「フォークボールは最近メジャーで投げる選手がいなくなっていた」、イチローのときは「しょせん内野安打が多いだけ」と米メディアからの冷ややかな声もあった。
2人は年数を重ね、実績を残し続けることで、その声を消し、堂々、アメリカでリスペクトされるレジェンドとなった。
担当者2度のニヤリ
開幕前、やはり米メディアからの洗礼を受けた大谷だが、払拭するスピードが2人より速い。
一つには、表現自体は和風になるが、相手の土俵に上がったうえで、相手以上の結果を出しているのだから、誰も文句のつけようがないのだろう。
メジャーが驚く163キロ、メジャーが驚く打球の飛距離、しかもベーブ・ルース以来の本格“二刀流”だ。
6月は大谷とってゲンのいい月でもある。2013年、
日本ハム1年目の一軍初勝利が6月1日の中日戦(札幌ドーム)だった。以後を見ても翌14年は3勝0敗、防御率1.37、15年が2勝1敗、防御率0.78、16年が4勝0敗、防御率0.29(ちなみに5試合登板に終わった17年は6月の登板自体ない)。
エンジンが大きい分、スロースターターで、かつ故障が多かった大谷にとって、開幕から2カ月が過ぎた6月あたりが“稼ぎ時”だったのか、それとも交流戦の季節なのでセがだらしなかったのか。実際、大谷は日本通算42勝15敗だが、うち対セは9勝1敗となっている。
ただし、大谷の独占インタビューが取れたわけではない。連日の日本メディアの大報道もあり、編集会議では短期間でできる新鮮味のある切り口がなかなか思いつかなかったが、メジャー担当のHSは「任せてください」とニヤリ。
米在住ライターと日頃から「もし大谷特集があったら」といろいろ相談していたらしい。聞くと、確かに面白そうなテーマではあった。写真セレクトについては編集部最年少女性記者のY、さらに嫁さんにも相談したいという。「女性がかわいいと思う写真のほうがいいじゃないですか」と、またニヤリ……。信じよう。
交流戦の注目は
モノクロページは各球団1ページずつを各球団担当に与え、それぞれにテーマを設定させることにした。
5月31日3試合終了時点で担当記者から集まったのが、
広島「若手の投懐現象は止まるのか?」、
DeNA「出遅れ3先発の復活は本物か?」、
阪神「低迷打線はいつ目覚めるか?」、
巨人「先発陣の再編は奏功するか?」、中日「中継ぎ投手陣は立て直せるか?」、
ヤクルト「2017年交流戦の悪夢を振り払えるか?」、
西武「投手陣は復活するのか?」、日本ハム「チームの穴はなぜ埋まったのか?」、
ソフトバンク「
内川聖一の代役たちとホームでの戦い方はどうするのか?」、
ロッテ「先発ローテは固められるのか?」、
オリックス「猫の目打線は続くのか?」、
楽天「救援陣再編はなるか?」である。
この時期のプロ野球は1日1日まったく状況が違う。しかも交流戦だ。互いの情報が圧倒的に少なく、何が起こっても不思議ではない。上記のテーマも、すでにずれてしまったものもある。
ただ、最後まで粘りたいと思っているのはデスクの私だけで編集部員、デザイナー、印刷所は、「はよ、決めんか!」と思っているかもしれないが……。
そうそう。松坂のインタビューは無事終了。担当のTSは「すごく面白かったです!」と興奮していた。
文=井口英規 写真=GettyImages