
フルイニング出場を続ける秋山
「最後まで試合に出続けることに対して、高いモチベーションがあります」と常々口にするのが
秋山翔吾(
西武)だ。2015年から全試合フルイニング出場を続け、連続試合出場は6月1日現在、588試合。これは
鳥谷敬(
阪神)の連続試合出場記録が途切れたため、現役トップの数字だ。
単純に試合に出続けるだけではない。「(フルイニング出場の)記録が邪魔にならないように、常にチームに必要とされる選手にならなければいけません」という。あくまで記録ではなく、勝利のために。昨年は自身初の首位打者を獲得し、今年も打率.355、9本塁打、37打点とハイレベルの数字をマーク。強い自覚の下、首位を走るチームをトップバッターとしてけん引している。
今年で30歳となったが、いまだチーム随一の練習量も誇る。ただ、これに若干、心配しているのが前々西武監督の
伊原春樹氏だ。
「練習熱心なのは素晴らしいこと。ただ、これまでも練習をやり過ぎて体を壊してしまう選手もたくさん見てきた。もちろん、翔吾は自己管理能力にも優れているから、“やり過ぎ”は良くないと分かっているだろうけど……」
伊原氏が2度目の西武監督となったとき、秋山に一つだけアドバイスしたことがある。
「それまで試合を見ていたら、センターの守備でやたら飛び込んで打球をキャッチしたりするシーンが見受けられた。でも、それだと危ない。ケガをする可能性が高まってしまう。だから『黄金時代の秋山(幸二)はギリギリの打球でも飛び込んだりせず、シャーっと捕っていたぞ。お前さんもそういった守備ができる能力があるんだから』と言ったんだ」
少しでも息の長い選手になってもらうために――。チームを離れても伊原氏は背番号55に“親心”を持っている。
文=小林光男 写真=大泉謙也