今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永く、お付き合いいただきたい。 中日・ニューク初比登板

表紙は阪神・藤本定義
今回は『1962年10月29日号』。定価は40円だ。
阪神─東映の日本シリーズが始まった。この号では3試合目までがレポートされている。
第1戦(甲子園)は阪神・
小山正明、東映・
土橋正幸の先発。5対5の延長10回裏、四番手・
尾崎行雄から
吉田義男が犠飛で1点を取って阪神がサヨナラ勝ち。10回表二死から先発・小山をリリーフし、
毒島章一を三振に斬って取った
村山実が勝利投手となった。
続く第2戦は阪神先発・村山の一人舞台。8回途中まで完全試合の快投で完封勝利。しかも右手の指が腱鞘炎のため冷たくなり、マウンドで息を吹きかけながらのピッチングだった。人差し指と中指は真っすぐ伸びない状態になっていたという。
1日あけ、神宮に舞台を移しての第3戦は延長14回2対2の引き分けだった。ただ1試合目5の0、2試合目3の0だった東映の三番・毒島が5回途中から二番手で投げていた村山からソロ本塁打、7回には、同じく村山から第1戦で3失策の
岩下光一がタイムリーで同点に。少しだが、阪神一辺倒の流れが変わりつつある感じもある。
阪神打線で好調を維持するのは第2戦で3ランを放った四番・
藤本勝巳。シリーズ後には歌手・島倉千代子さんとの婚約発表を控えていた。
ペナントレースでは、シーズン最終戦の対
広島でメジャーの149勝投手、
中日の
ニュークがついにマウンドに立った。本人は「気が進まない」と最後まで嫌がったが、オーナー直々の指令と聞いて4イニングを投げた。タイムリーを浴び2失点に、これまで記録だけを見ていたときは「やはり一度引退した選手の球なんて」と思っていたが、記事を読むと、球も速く、チェンジアップは捕手が捕球にもたつくほど変化した、という。
小社には「中日野手ニューク」はあるが、「中日投手ニューク」の写真は残っていない。消化試合とあってカメラマンを派遣しなかったのだろう。残念。
ちなみにMVPを取れなかった小山には沢村賞とセ・リーグから優秀功労賞が贈られた。
小山は照れ隠しもあってだろうが、
「ほんとにこんな賞があったんかいな。今年の俺のために作ったんと違うか」
と言っていたとか。
以下宣伝。
週べ60年記念シリーズ『
巨人編』『
日本ハム編』『阪神編』『
ロッテ編』が発売中。現在、『広島編』を6月29日発売予定で鋭意制作中です。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM