
バットを見つめる柳田は、たしかに会話をしているようにも見える
7月1日の
ロッテ戦(ヤフオクドーム)で1対4と敗戦を喫した
ソフトバンクは、上位を追撃するどころか、
オリックス、ロッテに同率3位で並ばれた。精彩を欠く戦いぶりに指揮官も「去年の王者がこんな姿を見せちゃいけない」と危機感をあらわにする。
不安定な投手陣はもちろんだが
内川聖一や
松田宣浩らチームの主軸の打撃不振が際立つ中、5月24日の
西武戦(ヤフオクドーム)から四番に入りチームをバットで鼓舞しているのが
柳田悠岐だ。
今季スタートこそなかなかホームランが出なかったが、3、4月=打率.353、5本塁打、5月=.387、7本。6月は少し落ちたものの、それでも.289、6本とここまで大きな波もなくきている。昨季は「穏やかな心」で打席に入っていると語っていた柳田だが、今季、意識しているのは「集中をしっかりすること」。ネクストバッターズサークル辺りから徐々に集中力を高めていくのだという。
そんな柳田の打席で時折、気になるシーンを見かける。バットを見つめ、なにか話しかけているようにも見えるその姿。ファンの間では「柳田選手がバットと会話している」と話題になっている。真相はどうなのか。
「いやいや、ないっす(笑)。(話かけているように)見えているだけだと思いますよ」。やはり……。だが、笑顔の柳田はこう続けた。
「話しかけることはないですけど、(そういうふうに見えるのは)そのときの心理状態もあるんじゃないかと思います」
集中力を高め入った打席では「無意識」という柳田。無心でフルスイングする。だからこそ打球は、時に鋭く野手の間を抜け、時に美しい放物線を描きスタンドに消えていく。柳田がバットと会話しているような瞬間は、良い状態で打席に入れている証拠なのかもしれない。
文=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭