いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? プロ野球の最古参と21世紀の選手たち
旧国名では越前国だった北東部が広大で、同じく若狭国だった南西部が狭くなるカギのような地形が特徴的な福井県。冬になると山間部は豪雪に見舞われるが、沿岸部は対馬海流の影響で雪は少なく、むしろ雨が多い。リアス式海岸を形成する若狭湾の東尋坊は景勝地として有名だ。
産業では鯖江市のメガネが有名だが、原子力発電の関連施設でも知られる。長い歴史を誇る越前そばは香り高く、B級グルメのソースカツ丼も香ばしく美味。あっさりしたいときは前者、ガッツリいきたいときは後者と、選択肢の振れ幅が広いのも魅力だ。
そんな福井県出身のプロ野球選手は、阪神の歴史で欠かせない名選手が中心。初代主将を務めた
松木謙治郎だ。ここでも不動の四番打者として、打線の主軸を担う。
【福井ドリームチーム】
一(中)
天谷宗一郎(
広島)★
二(右)
牧田明久(
楽天ほか)
三(二)
東出輝裕(広島)
四(一)松木謙治郎(阪神)
五(三)
小林利蔵(金鯱)
六(左)
吉田正尚(
オリックス)★
七(捕)
中村悠平(
ヤクルト)★
八(遊)
浜中祥和(大洋ほか)
九(投)
高橋里志(広島ほか)
(★は現役)
松木らプロ野球の最古参もいる一方で、現役も含めて21世紀の選手も目立つ布陣となった。リードオフマンは現役でベテランの天谷宗一郎で、続く二番が楽天の創設メンバーでもある牧田明久だ。
2010年に本塁打性の打球をフェンスによじ登って好捕したことでも知られる天谷が外野の要として中堅に入り、仕事人の牧田と右中間を形成。経験は浅いが、左翼にはプロ3年目の吉田正尚を選んだ。
三番打者は俊足巧打で低迷期の広島を引っ張った東出輝裕。遊撃や二塁が多かったが、ここでは松木と一、二塁間、打順でも三、四番でコンビを組む。松木に続く五番打者の小林利蔵はプロ野球が始まった1936年に金鯱の創設メンバーとなった内野手で、本職は一塁手だが、ここでは松木の存在から三塁へ。
勝負強い打撃を誇り、四番からはプロ野球の最古参が、六番からは現役が並んだ。長打力を秘めた左打者の吉田に続くのはヤクルトの正捕手で、18年は主将も務める中村悠平。司令塔は“ヒゲ辻”こと
辻佳紀(阪神ほか)との二枚看板だ。
八番に入ったのは60年代に堅守と俊足でバックアップとして機能した浜中祥和。ここでも三塁の経験が少ない小林のフォローで存在感を発揮しそうだ。
投手陣は左右両輪のダブル高橋

広島・高橋里志
エースは最多勝、最優秀防御率1度ずつの高橋里志。松木の存在もあってか、阪神と縁がある選手が多い福井県だが、捕手も中村が辻の通算安打を上回ったこともあって辻は控えに回り、オーダーでは広島勢が目立つ結果になった。
先発でも救援でも計算できる
横山竜士(広島)もいる。スターターでは右腕の
後藤光貴(
西武ほか)もいるが、投手陣の層は厚いとは言えない。長く
中日でプレーし、16年から虎の遺伝子を継承した左腕で現役
高橋聡文(阪神)がリリーバーながら高橋里志との左右両輪となりそうだ。
一方で、発展途上の吉田を先発の左翼に据え、あえて控えに温存したのが“浪速の春団治”川藤幸三だ。アキレス腱の故障からは鈍足のイメージとなったが、若手時代は俊足で鳴らした外野手で、デビューは遊撃手として。
吉田を下げて川藤を先発に据えるか、やや冒険だが浜中を下げて川藤に遊撃を任せるか、やはり代打の切り札か。虎のレジェンドが率いるチームのカギを握るのは、虎の人気者だ。
写真=BBM