いよいよ第100回の大きな節目を迎える夏の甲子園。その歴史にこそ届かないが、80年を超えるプロ野球を彩ってきた選手たちによる出身地別のドリームチームを編成してみた。優勝旗が翻るのは、どの都道府県か……? 通算100盗塁を5人がクリア
南北に長く、全国4位の面積を誇る長野県。平地面積は大きくなく、日本アルプスなどの山岳地帯が広がり、各地に有名スキー場が点在している。冬の冷え込みは厳しく、1998年には冬季オリンピックが開催された。旧国名は信濃。日本で一番長い信濃川は長野県を南北に縦断、新潟県を貫いて日本海へと注ぐが、長野県内では千曲川と呼ばれている。名物の蕎麦や味噌は歴史も古く、知名度も全国区。リンゴや高原野菜の産地としても有名だ。
教育県としても知られる長野県出身のプロ野球選手も勤勉で真面目な印象があり、巨人を中心に活躍した選手が目立つ。象徴的なのは38年秋にプロ野球で初めて三冠王に輝いた中島治康。面倒見がよく“班長”と呼ばれたが、シャイな性格で、その38年秋に野球連盟が閉幕を盛り上げるために中島の顔をアップに「日本一の本塁打王」との見出しでポスターを作ったところ、絶好調だった打撃が急失速したという。ちなみに、当時は三冠王という概念がなく、特に表彰もされなかった。
【長野ドリームチーム】
一(中)
聖澤諒(
楽天)★
二(三)
小森光生(毎日ほか)
三(一)
町田行彦(国鉄ほか)
四(右)中島治康(巨人ほか)
五(遊)
宮崎剛(
阪神ほか)
六(二)
土屋正孝(巨人ほか)
七(左)
上田佳範(
日本ハムほか)
八(捕)
吉沢岳男(
中日ほか)
九(投)
堀内庄(巨人)
(★は現役)
主砲は中島。長距離砲で機動力と守備は二の次というイメージがある三冠王だが、中島は強打者というよりは巧打者で、攻守走すべてに秀でていた。打線も長打で得点を荒稼ぎするというより、堅守巧打で1点を守り抜くタイプで、通算100本塁打を超えているのは55年の本塁打王でもある町田行彦のみだ。
外野守備は鉄壁。中堅は外野手として927連続守備機会無失策のプロ野球記録を持つ聖澤諒だ。左翼は投手出身の強肩を誇る上田佳範で、右翼が中島。21世紀のプロ野球を知る2人が、草創期のレジェンドと外野陣を形成する。
町田が一塁にいる内野陣も安定していて、三塁手ながら
長嶋茂雄(巨人)の入団で二塁に回った土屋正孝が町田と一、二塁間を組む。三塁にいるのが早大で名遊撃手の
広岡達朗と三遊間を組んだ小森光生。二塁や三塁が多かった名手の宮崎剛が、その中間の遊撃に入った。
打順は2012年の盗塁王でもある聖澤に韋駄天の小森が続き、町田、中島、宮崎、土屋のクリーンアップは通算100盗塁もクリアしている。
97年には打率.300をマークするなどシュアな打撃も光った上田が七番に入ったが、犠打などの小技にも長けており、聖澤と上田の一、二番コンビからクリーンアップにつなぐのもいいかもしれない。
エースは“松商の怪腕”
巨人・堀内庄
バッテリーは52年の春夏連続で甲子園に出場した松商学園高のコンビで、巨人で50年代の黄金期を支えた堀内庄と、抜群のインサイドワークで中日と近鉄の司令塔を担った吉沢岳男。打順でも八、九番でコンビだが、ダウンスイングの新田理論を投球フォームに生かした堀内は打撃も巧みで、打線に切れ目はない。
ただ、投手はサイドスローの
御子柴進(阪神ほか)、打者は内野手でプロでは結果を残せなかった
荒川堯(
ヤクルトほか)、外野手では南海で正左翼手を務めた
堀込基明ら個性派が控えるが、選手の層は厚いとは言えない。
長期戦には持ち前の勤勉さで、故障を回避していく堅実なプレーも求められそうだ。
写真=BBM