
シーズン終盤を前にDeNA投手陣は苦戦をしいられている。何とか彼らの力になろうと伊藤は必死だ
1点差の9回裏、二死一、二塁のピンチを
山崎康晃が遊ゴロで切り抜けゲームセットとなると、
伊藤光はマウンドに駆け寄り、うれしそうにクローザーの肩を何度もたたいた。
8月14日の
中日戦(ナゴヤドーム)は途中出場ながら9回には満塁で粘り、
倉本寿彦の勝ち越しタイムリーにつながる押し出し同点四球を選んだ。そして、その裏、ピンチを招いた山崎を鼓舞して勝利にこぎつけたのだった。
「チームが勝ってこその捕手の存在価値です。そこに結びつけられていないのが、自分としては苦しい状況です」と語っていたのは試合前だ。
オリックスから移籍後、苦しいチーム状況もあり、なかなか勝利をもたらすことができないでいたが、この日はしっかりとチームの勝利に貢献できたことが試合後の笑顔となった。
DeNAへのトレードはまさに青天の霹靂だった。オールスター期間中に合流すると、チームのサインとともにバッテリーを組む投手の特徴を必死で覚えた。今では若い投手と積極的にコミュニケーションを取り、献身的な姿勢で信頼を集めている。
じつは、端正な顔だちの背番号29は「星」が大好き。カバンなど普段身に着けるものは星柄が多く、捕手の道具に入る自身のネームも星がモチーフされたデザインだ。「中学で所属していたのが東名古屋スターズで、それ以来ですね」。ベイスターズの雰囲気にもしっかり溶け込み、残りのシーズン、一つでも多くの勝利に貢献するためにマスクをかぶる。
文=滝川和臣 写真=川口洋邦