
福浦は約3年半ぶりの本塁打で2000安打まで残り4本とした
「まだまだ先は長いですけど、ほんとにもがき苦しみながらね、やらなければいけないなと思っています」
5月半ば、まだシーズンの序盤戦。2000安打への思いをそう口にした。そして今、その言葉どおり、42歳の
福浦和也はもがき苦しみながら金字塔を打ち立てようとしている。
残り38安打として迎えたプロ25年目のシーズンだった。久々に開幕スタメンに名を連ねて幸先よく安打を放つなど、好スタートを切ったが、やはり今季も自らのコンディションとの戦いとなった。冒頭の言葉を口にした直後の5月17日には、「体に力が入らない」と一軍登録を抹消されての再調整を余儀なくされている。
5月29日に一軍復帰を果たしてからも、フィジカルの状態は一進一退。それでも打席に立てば随所に打撃技術がさび付いてはいないことを見せつけ、コツコツと安打を重ねていく。何より、本拠地ZOZOマリンで「福浦」の名前が
コールされれば、誰よりもスタンドが沸いた。
「打席に立つのが僕の仕事だと思ってますし。その中であれだけ声援を受けると力にもなる。でも、そこでなんとか期待にも応えなきゃいけないし、プレッシャーもなくはないですけど……難しいですね(笑)」
必死にコンディションを整えながらも、毎日のルーティンは変わらない。あまりの変わらなさにはチームリーダーの
鈴木大地も舌を巻く。「アップからティーバッティングまで、自分の準備から練習と毎日必ず同じ動きをしている。本当にすごいですよ」。そうすることで自分の感覚を研ぎ澄ませているのだろう。
もちろん、と言っては失礼なのだが、今もフィジカルが万全とは言えない。慎重に状態を見極めながらの出場が続く。9月9日の
西武戦(メットライフ)も前日に3試合ぶりの先発復帰を果たしたばかりだったが、2回の第1打席に1995本目となる安打を中前へ運ぶと、4回の第2打席には約3年半ぶりとなる一発を放った。
「少しバットの先だったからどうかなって感じだったんだけど『越えてくれ』と思っていた。ホームランなんて久しぶりだよ」。高々と舞い上がった打球が右翼席に吸い込まれると、そう声を弾ませた。
今季2度目となるマルチ安打で、いよいよカウントダウンは残り4。15日の
楽天戦からはZOZOマリンでの8連戦となる。熱いファンが詰めかけるであろう本拠地での偉業達成は、現実のものとなるはずだ。そしてそのとき、幕張は爆発する。
文=杉浦多夢 写真=大泉謙也