
昨年の悔しさを晴らすべく、静かに闘志を燃やす上林
10月13日13時――。日本シリーズをかけた戦いが、ひと足先にパ・リーグから幕を開ける。昨年とは違う立場でクライマックスシリーズ(CS)を迎える
ソフトバンク。その中で昨年の雪辱を期す男がいる。
上林誠知だ。
昨年のCSファイナルステージ。日本シリーズ進出を決め歓喜に沸くグラウンドの隅で1人悔し涙を流す上林の姿を、いまでも鮮明に覚えている。あえていまだからこそ上林に当時を振り返ってもらったのだが、「(昨年は)“準備”ができていなかった」。シーズン終盤から狂ってしまった打撃を、立て直すことができなかった自分。あのときの悔しさは1年経っても消えることはない。
それでも今年は「準備はできています」。シーズン全試合出場を果たし、打率.270、22本塁打、62打点、そして12球団トップの14三塁打と、主要打撃部門すべてでキャリアハイをマークしたことは、自信につながっていた。
「シーズンでやられた分はやり返したい」。シーズン負け越しを喫した
日本ハム、リーグ連覇を阻まれた
西武に対し、静かに闘志を燃やす。
そんな上林が考えるCSのキーマンは誰なのか。
「ギータ(
柳田悠岐)さんですね。シーズン中でも一番打つバッターですし、一番頼れるバッターなので。まずはギータさんの前にどれだけランナーをためられるかというのがポイントになってくると思います」
しかしこれ、実はテイク2。最初に名前が挙がったのは、別の選手だった。質問に対し少し考えたあと、上林が力を込めてこう答えた。
「
内川聖一さんでお願いします!」
離脱中でCSファーストステージに間に合わない可能性が高かったため、誌面の都合上、上記のテイク2をお願いしたのだが、内川を挙げた理由には上林の内川に対する思いがあふれていた。
「昨年(4試合連続アーチなど)打ちまくったということもありますし、このまま終わってほしくないんですよ。これを聞いたらそれだけでやる気になってくれると思うんで(笑)」
自主トレをともにし内川を「師匠」とあおぐ上林。打撃不振やケガに苦しんだ内川をいつも気にしていた。このまま終わってほしくない――。まるで一ファンのように、内川の復活を望んでいる。
内川は現在、みやざきフェ
ニックス・リーグに参加中。11日の西武戦(南郷)では
多和田真三郎から左前打、
榎田大樹から左中間方向へ運ぶ本塁打と、西武の主力投手陣を相手に順調な回復ぶりを見せた。このままいけばファイナルステージ復帰の可能性もありそうだ。
ならば師匠のためにも、ファーストステージで敗退するわけにはいかない。
文=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭