今年は10月25日に行われるドラフト会議。毎年、金の卵たちが、どの球団へ進むか大きな注目を集める“一大イベント”で、さまざまなドラマも生まれる。今年で54年目を迎えるドラフト会議の歴史を週刊ベースボールONLINEでは振り返っていく。 史上6度目の同一大学から3人の1位指名

ドラフト当日、斎藤(写真)ら早大の選手は会見をせず、記者たちの前を足早に通り過ぎた
2010年10月28日
第46回ドラフト会議
(グランドプリンスホテル新高輪)
[1位選手]
横浜
須田幸太 (JFE東日本)
楽天 塩見貴洋 (八戸大)
広島 福井優也 (早大)
オリックス 後藤駿太 (前橋商高)
ヤクルト 山田哲人 (履正社高)
日本ハム 斎藤佑樹 (早大)
巨人 澤村拓一 (中大)
ロッテ 伊志嶺翔大(東海大)
阪神 榎田大樹 (東京ガス)
西武 大石達也 (早大)
中日 大野雄大 (佛教大)
ソフトバンク 山下斐紹 (習志野高)
その日、東京は雨だった。ドラフト会議で注目されたのは「早大の3投手」、斎藤佑樹、福井優也、大石達也だったが、学校側の方針でドラフト当日の会見はなし。2日後の早慶戦に集中するためだった。
最も入札が多かったのは大石で前年の
菊池雄星と同じ数となる6球団が競合した。当たりクジを引いたのはまたしても西武・
渡辺久信監督。神懸かり的な強運ぶりだ。4球団競合の斎藤は日本ハムが交渉権を獲得、そして大石の外れ1位で広島が福井を指名した。同一大学から3人の1位指名は史上6度目だが、すべて投手は初めてだった。
3人の中で一番の注目は、やはり斎藤だった。早実時代、甲子園で“ハンカチ王子”として一世を風靡し、東京六大学でも史上6人目の30勝&300奪三振を達成。“持っている男”としての1位指名だった。
ただ、現状では、斎藤をはじめ、この3人が入団前の評価ほどの結果を出しているわけではない。
外れの外れの1位で山田がヤクルトへ

ヤクルト1位の山田。ヤクルトの印象を聞かれ「よく分かりません」
いま振り返ればだが、結果的には、「3人の強打者」のドラフトだった。
斎藤を外したヤクルトは、次に楽天と塩見貴洋を競合も外れ、結局、外れの外れ1位で、履正社高の山田哲人を獲得する。履正社高の先輩にオリックスのT-岡田がいたことから「T-山田」とも言われていたが、聞かれると「ふつうの山田でいいです」。説明するまでもあるまい。今季、3度目のトリプルスリーを達成した強打者だ。
ソフトバンクの2位にも、同じくトリプルスリー男・
柳田悠岐(広島経大)がいたことも驚きだが、さらに西武3位がヒットメーカー・
秋山翔吾。攻守走を兼ね備えた球界を代表する強打者3人がそろった。ソフトバンクは柳田か秋山かで迷い、
王貞治会長が「ホームランを打てるほうがいい」と柳田にしたという逸話もある。
1位では巨人が「巨人以外ならメジャー」と報道されていた中大の剛腕・澤村拓一を一本釣り。会見場で澤村はうれし涙を流した。巨人は2位で
宮國椋丞(糸満高)も獲得している。
中日は肩の不安も伝えられていた左腕エースの大野雄大を同じく一本釣り。大石を外し、伊志嶺翔大をロッテと、山田をヤクルトと競合し敗れたオリックスは俊足外野手・後藤駿太を獲得した。ロッテの2位は
南昌輝(立正大)だ。
楽天は1位で塩見貴洋、2位で
美馬学(東京ガス)と現在の先発を2人獲得し、ほか横浜の6位で現在楽天の
福山博之も入団している。
須田幸太を1位指名した横浜は3位に
荒波翔(トヨタ自動車)、5位には1年目から71試合登板の
大原慎司(TDK)がいた。
榎田大樹が1位の阪神は、2位で東海大相模高のエースとして甲子園を沸かせた
一二三慎太が話題となったが、大成せず。3位には
中谷将大(福岡工大城東高)がいる。
2位には柳田に加え、西武の
牧田和久(日本通運)、日本ハムの
西川遥輝(智弁和歌山高)の名前もある。下位では日本ハム5位・
谷口雄也(愛工大名電高)、ヤクルト5位・
久古健太郎(日本製紙石巻)、さらに広島6位に
中崎翔太(日南学園高)もいる。
育成ではソフトバンクがすごかった。4位でおばけフォークの
千賀滉大(蒲郡高)をはじめ、5位で
牧原大成(熊本・城北高)、6位で
甲斐拓也(楊志館高)を獲得。ヤクルトが育成3位で
由規の実弟・
佐藤貴規(仙台育英高)を指名して話題になったが、ほかにも巨人7位の川口寛人(西多摩倶楽部)、楽天3位で
川口隼人(高島ベースボールクラブ)と育成の双子の指名でも話題となった。
<次回に続く>
写真=BBM