
先発投手のクオリティースタートなど関係なく投手をやり繰りしたカウンセル監督(右)。ブリュワーズはリーグ優勝決定シリーズまで快進撃を続けた
ナ・リーグ優勝決定シリーズのドジャース対ブリュワーズは極めて興味深い対決だった。ブリュワーズは先発投手が長いイニングを投げゲームを作るという伝統的な戦い方にこだわらず、リリーフ投手を序盤から次々につぎ込んでいたからだ。
シーズン終盤から、プレーオフにかけ12連勝と快進撃だったが、先発投手が6イニングを投げたことはなくクオリティースタートを必要としなかった。先発の役割は取れるだけアウトを取ってマウンドを降りる。そのあとは右腕ブランドン・ウッドラフら長い回も投げられる中継ぎをはさみ、終盤は左腕ジョシュ・ヘイダー、右腕ジェレミー・ジェフレスらを起用する。
ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は「こんなに層の厚いブルペンは見たことがない。だがうちも良い野手がそろっている。チェスのような戦いになる」と予想した。
ブリュワーズのクレイグ・カウンセル監督は「現在の野球では監督は投手対打者で常に相性のいい対戦になるよう試合をマネージメントしなければならない」と説明。例えば第1戦の先発は左腕ジオ・
ゴンザレス。メジャー通算127勝のベテランだが、監督は前日「ジオにはいくつかアウトを取ってくれと伝えた。いくつかは試合に入ってから分かる」とのこと。
ドジャースは左腕に備えて、右打者中心の打線を組んだ。ゴンザレスは2回1失点で右腕ウッドラフに交代。右腕は3回、4回と右打者中心の打線を無失点に抑える。ロバーツ監督は左打者に代えたいところだが、ブルペンエース、左腕ヘイダーが控えるからそうもいかない。案の定、5回から7回はヘイダーが快投。ブリュワーズが6対5と先勝した。
第5戦は、左腕ウエイド・マイリーが先発。ドジャースは右打者中心の打線。マイリーは先頭打者に四球を与えると、スタンドの5万人ファンがあっけにとられる中、即、降板。右腕ウッドラフは6回途中まで2失点(自責1)の好投である。
会見で記者に「なぜSUBTERFUGE(詐術、人を騙す手段)に出たんだ?」と聞かれると、カウンセル監督は「SUBTERFUGEの言葉の意味が分からない?」と笑わせたあと、「いいかい、マッチアップの戦いだからだ」と諭すように答えた。問題はこの戦い方だと、リリーフ投手にかかる肉体的負担が大きく、打者も目が慣れ、打たれる確率が高くなっていくこと。
そして第4戦は延長13回で、12回をブルペンの6人で投げ、1対2の惜敗。ダメージは大きかった。ところでこの戦い方は、レイズが今季5月に始めた「オープナー(リリーフ投手が先発して1、2回を投げる)」に似ているが、必ずしも同じではない。
カウンセル監督は、オープナーがMLBで浸透すると思うかと聞かれ「分からない。うちは9月まで今のような起用方法はやっていなかった。9月に選手枠が広がったから、できるようになっただけ」と説明。「プレーオフは(通常の)25人の選手枠だが、休みの日が増え、良い投手を続けて使えるから、公式戦とは戦い方が異なる」と話した。
王道はこれまでどおり、先発投手が長いイニングを投げること。だが優れた先発投手がそろわないから、発想を転換、創造性を発揮して、この快進撃となったのである。