
FA宣言した丸佳浩の去就は果たして……
11月13日に初めてマツダ
広島で行われた日米野球では、元エースの
前田健太(ドジャース)と現エースの
大瀬良大地が投げ合ったり、
菊池涼介のスクイズで
田中広輔が生還したりと、カープファンはなかなか盛り上がったことだろうが、それはそれとして――。
とりあえず、11月3日、日本シリーズに敗れたところで、2018年のカープの戦いは終わった。今季限りで引退する
新井貴浩を日本一で送り出せればこの上ないストーリーの完結だったが、それはかなわなかった。セ・リーグでは独走で3連覇を達成したが、日本シリーズではパ・リーグ2位の
ソフトバンクに力の差を見せつけられた。何と言っていいのか、どことなく宙ぶらりんな気分になっているファンが多いのではないかと推察する。
そんな中だが、11月に入ると、野球界は「行く人来る人」のニュースがいろいろと聞こえてくるシーズンだ。カープでも来季スタッフが発表され、来季への動きが始まった。コーチ人事では、顔ぶれ自体の変更はないが、一軍、二軍、三軍の間で一部担当替えがあり、
佐々岡真司投手コーチと
山田和利内野守備・走塁コーチが新たに一軍スタッフとなった。
佐々岡コーチは、今季、投手陣の救世主となった
フランスアに的確なアドバイスを与えて成長に導くなど、その育成手腕が買われており、今季防御率4点台に終わった投手陣をどう改善していくかが見もの。内野守備・走塁コーチの入れ替えは、日本シリーズで機動力を封じられたことと関係があるのかどうか……。まあ、その辺は外からはちょっとうかがい知れぬところ。
11月14日には、外国人の去就も決まった。四番を打つなど7年間にわたって活躍し、2014年にはホームラン王になった
エルドレッドがついに退団。ナインにも溶け込み、ファンにも愛された外国人選手だっただけに残念だが、若くて長期契約を結んでいる、カープアカデミー出身の
バティスタと
メヒアの成長で、長距離砲外国人については将来の目途は立った、と見れば、編成上は妥当な判断と言えるだろう。また、勝利の方程式の一員として3連覇を支えてきた
ジャクソンも退団。後半になって安定感を欠いたり、故障があったりした点と、年齢を見られたか。
逆にポストシーズンから重用されたヘルウェグは残留となった。ただ、ではこのピッチャーが過去3年のジャクソンの代わりを務めるか、と言えば、そこはちょっと違う気がする。ヘルウェグは、どちらかというと、右打者に対する「ジョーカー」のような存在になるタイプの投手。150キロを超えるツーシームと荒れ球で、強打者を打ち取れる可能性も持つが、四死球の可能性も低くなく、勝利の方程式に入ってリードをしっかり守る、というタイプではない。来季の勝利の方程式には、
一岡竜司、フランスア、
中崎翔太に加えてもう一枚、新しい顔が必要になってきそうだ。
ただしかし、カープにとっては、来季の戦力構想を描こうにも、いま一歩割り切れない状況が、一方にはある。そう、FA宣言した丸佳浩の動向だ。普通、リーグは独走しながら日本シリーズに敗れたチームなら、「日本一になるためには」が自然に次のシーズンの目標設定になってしかるべきだが、もしも「丸流出」となった場合には、日本一を目標に掲げる状況ではなくなり、当然「セ・リーグVを続けるには?」を第一とする目標設定でのチームづくりになってくるだろう。ここがはっきりしないことには、チームの目標すら設定しにくいという面もあるのではなかろうか。
秋季キャンプでは、シーズン終盤にサードの守備に不安をのぞかせた3割打者の
西川龍馬が外野の練習を開始した。とにかく万一への備えだけは進めながら、チームは静かに丸の決断を待っている。
文=藤本泰祐 写真=BBM