
角中はスタミナ切れで失速した今季からの巻き返しを期す
ロッテの
角中勝也を、球界トップクラスのバットマンの1人に数えることに異論はないだろう。2012年と16年の首位打者。時に悪球打ちにも見える驚異的なヒッティングゾーンの広さと、それを実現するバットコントロールは見る者に驚きを与える。
「タイミングさえしっかり取れれば、多少のボール球なら関係ない。タイミングが取れていないど真ん中よりは、タイミングが取れているボール球のほうが全然打ちやすい」。最多安打との2冠に輝いた16年、こともなげにそう話していた。
“感覚”という漠然とした言葉しか使えないのがもどかしいが、角中は自らの感覚を大事にしている。「その日その日の練習の中で、自分の引き出しの中から『今日はこれにしよう』という感じでやっている。バッティングのアプローチの仕方はいつも変えているし、打ち方は毎日、違っている」。
外から見ているだけでは分からない、もしかしたら映像で確認しても分からないほどの変化かもしれない。はっきりと目に見えるのは、追い込まれればノーステップに切り替えることくらい。それでも、角中の中では確かに何かが違う。その感覚は“天性”のものなのだろう。
だが、そんな天性の感覚をもってしてもフィジカルが万全でなければ結果にはつながらない。そのことを痛感した2018年シーズンだっただろう。オープン戦で外野フェンスに激突して胸椎を圧迫骨折。5月に復帰すると6月は月間打率.395をマークするも、8月は.205、9月は.209と大失速した。
7月を終えた段階で.317あった打率は、結局.265まで低下した。「普通に3割を打てるかなと思っていたら、全然でした」。もともと夏場にバテてしまう傾向はあったが、今季も「完全にスタミナ切れ」だった。
30代を迎え、ケアにかける時間は増やすようになった。だが、それだけでは足りない。かつては「最低限の体を作っておけば、春のキャンプでフィジカルは勝手に上がっていく」と話していた男が、今オフは体力強化のため本格的にウエート・トレーニングに取り組んでいる。夏を乗り切る貯金を作るためだ。
今オフ、初めて取得した国内FA権を行使せずに残留を決断したのは、「このユニフォームで優勝したい」から。そのためには当然、角中自身がカモメ打線をけん引しなければならない。ターゲットは3度目の首位打者となるはずだが、「まずは打率3割」と、つれない。
「だって3割は2回しか打ったことがないですからね」。そう、意外にも角中が3割超えを成したのは首位打者に輝いた2度だけ。さて、フィジカル強化をベースに3度目の3割到達を果たしたとき、首位打者も三度、角中の手に渡るのだろうか。
文=杉浦多夢 写真=BBM