
「OK強し」の握り。サークルチェンジよりも手の平をボールに密着させ、強い力でボールを握る
ドラフトで指名され仮契約を終えた選手たちは、年明けから始まる新人合同自主トレに備えトレーニングに励んでいる。
DeNAのドラフト1位右腕、
上茶谷大河(東洋大)も球団から進められたメニューを黙々とこなしている。
今秋のドラフトでは、
甲斐野央(
ソフトバンク・ドラフト1位)、
梅津晃大(
中日・同2位)とともに、東洋大の150kmトリオとして話題をさらったが、実際に投球の軸となるのは最速151kmの真っすぐよりも、変化球とのコンビネーションだ。本人も「真っすぐのアベレージは140km前半。キレで勝負するタイプ」と速球派でないことを自覚する。
今春の東都大学リーグ、駒大3回戦(5月4日)で1試合20奪三振の記録を打ち立てた試合も、内外角へ決まった真っすぐとともに、130km前後の落ちる変化球の威力が絶大だった。とくに左打者の外角に沈むボールはバットにかすらせもしなかった。
当初は「ツーシーム?スプリット?」「いや、カットだろ」と言われてきたが、じつは、いずれにも当てはまらない特殊球だった。名前は「OK強し」(オッケーづよし)。
「チェンジアップのサークルチェンジ(OKボール)の握りで、ぎゅっと強く、深く握るんです。東洋大では『OK強し』と呼んでいます」と上茶谷は魔球の正体を明かす。握力を使ってつぶすようにボールを握り、抜くことを意識せずに、そのままリリース。するとチェンジアップよりも球速がありながら、シンカー気味に落ちると言う。位置づけとしては、チェンジアップから派生した落ちるボールだ。
リーグ戦では「『OK強し』とチェンジアップの投げ分け」で三振の山を築いた。先日はテレビの取材で東洋大のグラウンドを訪れ、投球を見たOBの
谷繁元信氏から、この魔球の呼び名を上茶谷の名前である「タイガ」に変更しようとアドバイスを受けた。それ以来、ネーミングには頭を悩ませている。
DeNAは近年、
山崎康晃、
今永昇太、
濱口遥大、
東克樹と大卒投手がルーキーイヤーからしっかりと結果を残してきた。上茶谷も「OK強し」を武器に、早く一軍で投げる姿を見てみたいとワクワクさせてくれる期待の右腕だ。
文=滝川和臣 写真=BBM