
長野には日大時代から、自然と人を引き寄せる底抜けの明るさがあった
長野久義には、得意技がある。人の名前を覚えるのがメチャクチャ早いのだ。日大、社会人野球・Honda時代から、すでにドラフト候補として、多くのメディアと接する機会が多かったが、報道陣の一人ひとりの名前をすぐに記憶していた。挨拶一つをとっても「●●さん、こんにちは!」と、非常に気持ちが良い。さらに、多くのマスコミに取り囲まれるプロ入り後も、取材現場ではまったくぶれない「神対応」が続いていたという。
底抜けの明るさ。取材する側が爽快になると言えば、この人も、忘れてはならない。「新井さん」である。ファンに惜しまれつつ、昨シーズン限りでユニフォームを脱いだ元
広島・
新井貴浩氏だ。いつも笑顔で和ませてくれるキャラクターはファンサービスに加え、メディア受けも良かった。
新井という、チーム内における精神的支柱がポッカリと抜けた。他の選手が、その穴を埋めようと自覚を見せているものの、そう簡単にチームリーダーが誕生するものではない。鯉党を含めて、こうした「新井さんロス」を忘れさせてくれそうな救世主が現れた。
巨人へFA移籍した
丸佳浩の人的補償として獲得した長野である。
長野は巨人入団を貫くため、2度のドラフト指名を拒否したジャイアンツ愛の持ち主だ。今回、突然の移籍話に、こちらも胸を締め付けられる思いだった。だが、しばらくして長野本人の前向きなコメントが公となり、一安心した。
長野が新天地に溶け込むのは、時間の問題。かつて新井が広島から
阪神へFA移籍した際も、生え抜き? と勘違いしてしまうほど、すぐにタテジマに馴染んでいたのを思い出す。
長野には名前を覚えるのが早い、という取り柄がある。人を思いやる気持ちは、すぐ相手に伝わる。チームに有形無形の存在感をもたらすことは間違いない。リーグ4連覇を目指すカープにとって「ポスト新井さん」の懸念事項が、一気に解消されたと言える。長野加入が広島にどんな化学反応を起こすのか、早くも2月1日のキャンプインが待ちきれない。
文=岡本朋祐 写真=BBM