
プロで初めて満塁弾を浴びるなど9失点を喫した桑田
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は1994年3月5日だ。
これは「春の珍事」というものなのだろうか。キャンプ中からベストの状態で調整を続けてきたはずの
巨人投手陣が醜態をさらした。
桑田真澄が、投手会会長の
宮本和知が、そして守護神の
石毛博史までが……。
ダイエーとのオープン戦(北九州)で投手陣が打ち込まれた。先発の
門奈哲寛は6失点、桑田も押し出しに加えて、プロ初体験の満塁弾を含む屈辱の2回9安打9失点で沈んだ。宮本も2発を浴びるなど2回8安打5失点、石毛も止まらず2回7安打5失点。終わってみればサンドバッグのように打ち込まれ、オープン戦史上ワーストの25失点を献上してしまった。
打たれたりも打たれたりの29被安打は1946年のゴールドスター(対グレートリング)、50年の大洋(対
広島)、
中日(対大洋)が公式戦で記録した28被安打のプロ野球記録をも上回るものだった。
「話す言葉もないほどひどい」(桑田)
「ケツの毛までむしり取られたみたいだよ」(宮本)
「握力もなくなった」(石毛)
打たれた張本人たちはただ、懺悔するだけ。
長嶋茂雄監督は「記録でしょ? こんなの、ないものね。まあ、これだけ打たれたら、気持ちいいですよ」と意識的にサバサバした表情を見せたが、帰路に就くバスに乗ると視線は宙を見つめたままだった。
写真=BBM