
真っすぐが遅くなっても、各変化球のピッチトンネルが優れていることで活躍し続けるグレインキー
3月2日、テンピにあるエンゼルスのマイナーの練習場で、ダイヤモンドバックスのエース、ザック・グレインキーが投げていた。その日、オープン戦の相手は開幕シリーズで当たるドジャースだったため登板を回避し、
平野佳寿らとエンゼルスとの練習試合に回ってきた。
「周りを驚かせる事はないかもしれないが、ものすごく堅実ってレベルのピッチング。ものすごくの意味は堅実よりも上ってこと。それならいいのかなと」
3回47球。真っすぐは88マイル(約141キロ)しか出なかったが、鋭く落下するチェンジアップ、大きく縦に割れるカーブ、スライダーが有効。相手はあのアルバート・プホルスとジョナサン・ルクロイで、2人が毎回一、二番で出てくる特別ルールだったが、3回を本塁打による1失点だけに抑えた。「最後は疲れたけど、次に向けていい感じで練習できた」という。
グレインキーは6年2億650万ドルの大型契約の4年目。年平均3440万ドルは依然、MLB史上最高だ。円にすると約38億4000万円(1ドル=約112円)である。現在、彼のように30代で、年俸30億円以上を稼ぐ投手が、ほかにも5人いる。カブスの
ジョン・レスター、レッドソックスのデビッド・プライス、ドジャースのクレイトン・カーショー、アストロズのジャスティン・バーランダー、ナショナルズのマックス・シャーザー。全盛期は過ぎているのかもしれないが、飽くなき自己改革への意欲で、エリートレベルにとどまり、高額のサラリーに見合う結果を出し続ける。
年齢の壁に挑戦している。1年前のグレインキーはキャンプ中、足の付け根の痛みを訴え、真っすぐも80マイル台半ば。開幕投手からも外れ、4月の防御率は4.50だった。「春はひどかった。開幕後はなんとか見苦しくないシーズンにしないと、とそんなことを考えていた。それが、少しずつ内容が上がっていき、シーズンを通しては全体的にうまくいった」と振り返る。
オールスターに選ばれ、最終成績は15勝11敗、防御率3.21だった。球速はもはやエリートレベルではない。それでも異なる球種を途中まで同じような軌道で投げる、いわゆるピッチトンネルを通すのに長けていた。
練習試合でグレインキーの次に投げたリリーフ投手のアーチー・ブラッドリーは「球の軌道を徹底的に研究していて思いどおりにボールを操れる。ザックは本人が望めば45歳まで投げられるのでは」と感心する。特に「以前はこんなに試合でたくさん投げるとは思っていなかった」というチェンジアップが一番の武器になった。
今、グレインキーはチーム内で微妙な立場にいる。そもそも球団が彼に破格の契約を与えたのはポール・ゴールドシュミットら優秀な野手がいる間に優勝したかったから。しかしながら2年前はプレーオフでドジャースに敗れ、昨季はプレーオフにすら出られなかった。夢破れ、このオフ、ゴールドシュミットをトレードに出しチームを作り直し始めた。そんな中、グレインキーと年俸3440万ドルだけが残った。だがグレインキーの焦点は絞れている。エリートのピッチングを続けるのみだ。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images